車椅子クッションと褥瘡(床ずれ)ができる要因。作業療法士が解説。

この記事では、褥瘡ができる要因について解説をし、車椅子を利用するにあたって、どのようなことに気をつけると良いかを解説します。
私も病院に勤務していた際に、褥瘡委員会に属していました。そこで、褥瘡がある患者様も見てきました。
褥瘡は重度いたると、完治に時間を要し骨髄炎や骨炎などのリスクも高くなります。
また、完治または、軽度にまで修復するまでは車椅子座位では特に注意する必要があります。
重度の場合は、車椅子座位も控える場合がありベッド上での生活になることもあります。
ベッド上の生活になると、体力も低下するため本当に褥瘡には注意する必要があります。
そこで今回は、褥瘡ができる要因について解説をします。

褥瘡とは

「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血障害に陥り褥瘡となる」
と日本褥瘡学会は定義しています。
要するに、身体のある一点に圧力が持続的に加わることで、血流が低下します。
血流が低下したことで、皮膚や脂肪組織の栄養状態が悪くなります。
そして、皮膚や脂肪組織、重度の場合は筋組織までも壊死し、身体の表面上に陥没したポケットのような穴ができます。
褥瘡では、表皮部分の発赤で済むものもあれば、真皮、脂肪組織を貫通して骨や筋肉まで達するものがあります。

褥瘡の要因

褥瘡になる要因は、下記の項目が一定期間に複数合致することで、発症する危険性は非常に高まります。
褥瘡要因説明図
この個体要因や環境ケア要因に合致し、車椅子での生活をされている方は、車椅子はもちろん車椅子で使用しているクッションについても専門家(福祉機器業者、看護師、療法士など)に相談し助言を頂くことをおすすめします。

褥瘡の重症度分類

褥瘡は、発赤から骨、筋肉まで達する程度を重症度分類することができます。
NPUAPによる分類が代表的な褥瘡の重症度分類になります。NPUAPは、褥瘡が及んでいる深さによって、4段階で分類しています。

Ⅰ度:表皮に限局、皮膚に発赤

褥瘡重症度Ⅰ

Ⅰ度では、稀に皮膚の色素が濃い場合は、見落とされる危険性があり注意が必要です。骨突出(尾骨や坐骨など)褥瘡の好発部位に限局した領域に、通常の皮膚の色素に戻らない発赤が認められます。なお、皮膚損傷は伴いません。

Ⅱ度:真皮までの変化、表皮剥離、水泡形成

褥瘡重症度Ⅱ
Ⅱ度では、表皮に光沢や乾燥した潰瘍(表皮が炎症し、その傷が真皮に到達する状態のこと)が認められます。真皮に達するため、褥瘡部位は円状に窪んだようになります。創底が薄赤色(ピンク)のようになります。

Ⅲ度:脂肪組織、筋膜に達するもの

褥瘡重症度Ⅲ
Ⅲ度では、創底が脂肪組織までに達しポケットの窪みが深くなります。また、黄色壊死組織と言われる壊死した細胞が創口の周囲に付着している場合があります。なお、骨、腱、筋肉の露出は認めない状態です。

Ⅳ度:筋肉や腱、靭帯、骨まで及ぶもの

褥瘡重症度Ⅳ
Ⅳ度では、骨や筋肉、腱、靭帯などの露出を伴います。また、Ⅳ度まで達すると露出した骨や筋肉などを視認することができます。さらに、骨の露出を伴うことで、骨髄炎や骨炎などを伴う危険性があります。

まとめ

この記事では、褥瘡の定義と重症度について図解を用いて解説しました。車椅子のクッションの不適合によって、褥瘡になる場合も少なくありません。
クッション種類と選定方法についてはこちらで解説しています。
座る活動によって、臀部の尾骨や坐骨に体圧が一定時間以上かかり続けると、褥瘡になる可能性があります。
また、褥瘡が重度になるとベッド上での生活を余儀無くされる場合もあり、二次的な障害(基礎体力の低下など)に繋がる可能性があり、ならないように注意する必要があります。
本日も、最後まで読んで頂きありがとうございました。
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