この記事では、リハビリテーションを専門的に行う作業療法士の村中が記載しています。
目次
結 論
脳卒中のリハビリには、発症からの期間によって種類や方法などが変化します。
記事内容は
・脳卒中の後遺症
・後遺症の大まかな経過
・脳卒中のリハビリの種類(時期と職種など)
・脳卒中リハビリの発症からリハビリの流れ
これらについて解説をします。
1:脳卒中の後遺症
脳卒中の後遺症は
・運動麻痺
・バランス障害
・感覚障害
・高次脳機能障害(失語、記憶、注意など)
・構音障害
・嚥下障害
などがあります。
後遺症は、脳が出血や梗塞によって脳細胞が壊死して現れます。
後遺症によって、大きく生活は変化します。
・装具と杖を使わないと歩けない
・バランスが悪く、一人でお風呂に行けない
・車椅子を使わないと、移動できない
・麻痺で両手が使えず、調理や洗濯ができない
・雨の日に外に出れない
・麻痺の影響で、車の運転ができない
・バランスが悪く、一人でお風呂に行けない
・車椅子を使わないと、移動できない
・麻痺で両手が使えず、調理や洗濯ができない
・雨の日に外に出れない
・麻痺の影響で、車の運転ができない
など様々な障壁が現れます。
2:みんな一緒の脳卒中後の後遺症は出ない
脳卒中後の後遺症は、同じ発症部位でも出血、梗塞範囲で後遺症の種類や重症度が異なります。
例えば、脳の視床が代表的です。
視床出血は、発症が2番目に多い脳出血の部位です。
病院に在籍していた時や、今現在の脳卒中パーソナルトレーニング事業でも視床出血の方に関わることが多々あります。
視床出血の後遺症でも、3パターンあります。
『運動麻痺が出現している人』、『高次脳機能障害が出現している人』、『両方の後遺症が出現している人』がいます。
この差は、視床の構造を分解すると分かります。
視床全長はだいたい、親指程度と言われます。
(親指の長さ日本男性60.8mm、女性が56mm)
なので、視床は5〜6㎝と推定することができます。
この5〜6㎝の視床の中に、一体どれだけの神経核があるかご存知でしょうか?約11個もあると言われています。
1視床枕、2背内側核、3背側核、4背側外側核、5背側内側核、6視床前核、7前腹側核、8外側腹側核、9後外側腹側核、10後内側腹側核、11髄板内核など。
11個の神経核は、それぞれ役割が違います。
1個あたりの平均的な大きさを、これまでの情報から計算すると・・・
・視床全長が平均5.5㎝
・11個に別れる神経細胞
=1個あたりの大きさは0.5㎝(5mm)
そのため、5mmずれると役割は異なることになります。なので、脳卒中(脳出血や脳梗塞)では実際に出血や梗塞が、数mm違うと全く後遺症は異なることになります。
3:脳卒中の後遺症による悲惨さ
作業療法士として11年やってきました。11年で脳卒中を発症したいろんな患者様に、お会いしリハビリテーションやトレーニングを行なってきました。
その中でも多く言われるのが・・・
『脳卒中になって、初めて辛さがわかった』
とおっしゃられます。
病前は聞いたことある程度や薬や手術でどうにかなると、楽観的に捉えている方が多いです。そのため、発症後の患者様は心にダメージを受けます。
脳卒中はなりたくない病気です。また、重度から中等度の運動麻痺が出た場合は、病前通りに回復するのは稀です。
脳卒中のリハビリテーションやトレーニングでは、後遺症による問題を少しでも解決できる方法を検討します。
では、発症からどのようにリハビリテーションやトレーニングを行うか解説します。
4:脳卒中のリハビリ種類
脳卒中のリハビリテーションやトレーニング内容は、下記のスタッフが主に計画実施をします。
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
理学療法士
身体メカニズムのプロです。
解剖学を初めとして運動学、物理学に長けており特に歩行分野では足の麻痺の状態に合わせて、どのように回復を目指すかを考えます。
また、麻痺の回復に合わせて主に足の装具や杖などの検討を行います。また、近年では麻痺の回復や歩行の能力(歩行速度、安定性など)を入院中から早期に向上させるために医師、義肢装具士と共に適切な装具を検討します。
作業療法士
日常生活を工夫するプロです。
後遺症がある中で体をどのように動かすと、日常生活ができるか考えできるだけ自立するようにトレーニングを行います。また、福祉機器や手すりの種類、高さ、位置などを考え使って楽に生活できる方法を考えます。
さらに、腕のリハビリテーションと日常生活動作を連結させて、麻痺手をなるべく日常生活で使用できるように考えます。
言語聴覚士
聞く、話す、食べるのプロです。
聞く話すは、後遺症によって失語症という症状が現れます。また、構音障害(口で音が作れない)や流涎(よだれが流れる)という後遺症になる場合があります。
これらに対して、どのような方法で言語を理解するか、伝えるか、音を作るかと聞く、話すを専門的にリハビリテーションとトレーニングを行います。
また、脳卒中の後遺症によって嚥下障害(喉の麻痺によって、食べ物を飲み込むと気管に食べ物が入る)があると嚥下のリハビリテーションを行います。加えて定期的に喉の飲み込み具合を医師、看護師と3人でVF検査を行い飲み込み状況と食形態などを検討します。
医 師
患者の全身状態を診察で把握し、リハビリテーションの舵きりやリスク管理、服薬調節などを行います。
看護師
病棟での生活をどうリハビリテーションやトレーニングと言った類に繋げて日常生活で少しでも回復できるかなどを検討すると同時に、食事量や排泄、排便、血圧管理を行います。また、退院後に服薬があれば服薬を忘れないように入院中に自己管理するトレーニングなども始まります。
ソーシャルワーカー
入転院、退院などの手続サポートを行います。介護保険の申請手続支援、家族状況(経済面、マンパワー面、レスパイトなど)を把握し、退院後の生活をどう構築していくかを入院中に上記のスタッフから情報をもらって本人とご家族様でコーディネートします。
また、必要があれば自宅改修や福祉機器の搬入業者、退院後のケアマネ紹介を行い退院前にある程度の計画を立てるようになります。
5:脳卒中発症からリハビリの流れ
脳卒中リハビリの一般的流れは、下記の3つ順です。
・急性期リハビリテーション
・回復期リハビリテーション
・生活期リハビリテーション
もちろん、救急車で運ばれた病院で「軽い脳梗塞ですね」っと言われて、目立った後遺症もなく数日入院して退院する場合もあります。
しかし、脳卒中による後遺症があれば一般的にこの3つの流れになります。それぞれの項目を解説します。
急性期リハビリテーション
急性期のリハビリテーションでは、脳卒中の治療と並行してもしくは治療直後(最短で入院翌日から)から行われるリハビリテーションです。
期間:発症日から約2、3週間程度
リハビリテーション目的は、安静にしていることによる廃用症候群の予防と軽減です。
廃用症候群の種類
・褥瘡(床ずれ)寝ている時間の延長によって皮膚障害が起こる・筋萎縮:筋肉を使わないことで筋が衰える、細くなる・関節拘縮:関節を動かさないことで関節が硬くなる・骨萎縮:骨がもろくなる・心肺機能低下:軽い運動をするだけで、息切れが生じる・誤嚥性肺炎:喉の機能が低下し、飲み込む力が低下します。結果、食道ではなく気管に食物が入り、肺炎になる。・起立性低血圧:立ちくらみが出現する。・うつ傾向:もうだめだ・・・と精神的に落ち込むこと・血栓塞栓症:長期安静によって血栓(血液の塊)が形成され、その血栓が血管につまる。・そして、並行で脳卒中の後遺症に対してリハビリテーションを展開します。
急性期リハビリテーション内容
リスク管理を行いながら下記を実施します。
・早期離床
(ベッドから起きるようにする)
・関節可動域練習
(四肢、頸部、体幹などの関節を動かします)
・筋力増強練習
(ベッドで寝た状態または、ベッドから起きて筋力トレーニングを行います。また、可能であればリハビリテーション室でも実施します。)
・座位練習
(後遺症によってバランスが悪くなります。そのため、ベッドでスタッフが支えて座る練習をします。簡単であれば立位や歩行訓練をします。)
・立位練習
(後遺症によってバランスが悪くなります。また、足の筋力も低下します。そこでスタッフが支えて立位訓練を行います。)
・歩行練習
(後遺症によって、歩けなくなる場合があります。そこで、平行棒や牽引装置、仮装具などを使用して歩行練習を行います。)
・日常生活動作練習
(後遺症によってできない日常生活動作(例えば着替えやトイレ、車椅子への乗り移りなど)の練習を行える範囲で難易度を調節して行います。)
・摂食、嚥下訓練
(しっかりと飲み込むことができているかを確認し、その結果に合わせて食事形態(経管、きざみ、とろみ、常食など)を検討します。)
脳出血や脳梗塞を発症すると、出血や梗塞が進行している場合は安静を医師から求められます。容態安定後(通常入院翌日、術後2日以内から)から早期にリハビリテーションを開始します。
そこでは、まずベットから離床できる生活に必要な体力をつけるようにします。
体力は脳卒中の後遺症と、安静に寝ていることによって急速に低下します。その結果、先の廃用症候群などによって、ベッドで数日寝ていると起き上がれなくなってしまいます。
そこで急性期リハビリテーションを提供して、それらの予防と改善を行います。
回復期リハビリテーション
急性期の治療(生命維持)が終了した段階で、脳卒中などの後遺症があり、日常生活がままならないまたは介助が必要な場合に、それらの改善を目的に提供されます。
いわゆるリハビリテーションに特化したサービス展開がされます。
同法人内で回復期リハビリテーション病院を併設している場合と、他法人の回復期リハビリテーション病院へと転院する場合があります。
期間:急性期リハビリテーションから転院して最大5ヶ月または6ヶ月のリハビリテーションが行われます。
※多くは6ヶ月までのリハビリテーションは行いません。理由は、基本的に5ヶ月が限度と制度上定められています。高次脳機能障害によって、後遺症の改善や日常生活能力の回復を妨げられている場合、医師が判断し回復の見込みがあれば6ヶ月で期間延長の手続きを行います。
目的は、脳卒中の後遺症回復と、日常生活が自立できる方法を模索して、リハビリテーションを病棟とリハで連携して進めます。
リハビリテーションの時間も、急性期より大幅に増加します。
脳卒中の場合は、1日に3時間のリハビリテーションが365日(土日休みなし)で提供されます。
例1
・理学、作業、言語全てを行う症例場合
午前:40分(理学療法)、40分(作業療法)
午後:1時間(理学療法)、40分(言語聴覚)
例2
・理学、作業のみを行う場合
午前:40分(理学療法)、1時間(作業療法)
午後:40分(作業療法)、40分(理学療法)
このようなスケジュールを組んで、積極的にリハビリテーションを行います。
※ただし、病院によってスケジュールは異なる可能性があります。
また、病棟でも看護師が時間を作り病棟での歩行練習や日常生活動作練習などを自主練習の手伝いを行いながら展開します。
回復期リハビリテーション内容
・関節可動域練習
・筋力増強練習
・基本動作練習
・体力増強練習
・上肢機能練習
・下肢機能練習
・口腔機能練習
・嚥下機能練習
・バランス強化練習
・高次脳機能練習
・立ち上がり動作練習
・座位バランス練習
・立位バランス練習
・車椅子移乗動作練習
・車椅子駆動練習
・歩行動作練習
・屋外歩行練習
・応用歩行動作練習
・階段動作練習
・食事動作練習
・整容動作練習
・更衣動作練習
・移乗動作練習
・トイレ動作練習
・段差昇降練習
・階段動作練習
・床からの立ち上がり動作練習
・入浴動作練習
・家事動作練習(調理、洗濯、掃除、買物など)
・復職動作練習
・公共交通機関練習
・外出、外泊訓練
などありとあらゆる脳卒中の後遺症と日常生活に直結する問題に対して、スタッフが評価を行いながらリハビリテーションを提供します。
また、入院期間が数ヶ月になることがあり1ヶ月毎に医師、ソーシャルワーカーが現在の病状とリハビリテーションの結果などを説明します。
・介護保険について
これがないと、退院後に保険のリハビリテーションや、福祉機器レンタルのサービスが受けれません。
回復期では、退院後の生活がよりよくなる方法や手段を考えます。
その中で、社会保障でも介護保険は必須です。
そこで、介護保険料を収めている場合は、回復期へ転院した時点でソーシャルワーカーに介護保険についてのどう言った手続きをとれば良いか、説明を聞いて下さい。基本的に早めの段階(回復期リハビリテーションに転院してから)で相談してください。
理由は、申請から結果が出るまで時間がかかります。
・介護保険申請の流れ
役所に申請→役所から区分判定調査がきます→区分判定会議が役所で行われます→区分判定決定→区分判定結果を記載した通知が自宅に届きます。
この一連の介護保険の判定書による通知がされるまでに、1ヶ月半から2ヶ月かかる場合があります。
あまりありませんが、回復期のリハビリテーション病院などは前述したように最長でも基本的には5ヶ月しか入院できません。
万が一、回復期リハビリテーションに転院してから3ヶ月が経過していると、5ヶ月目の退院直前まで判定通知が届かない場合があります。
その結果、車椅子などを自費でレンタルしなくてはいけない状況になります。
これらのトラブルを避ける目的でも、早めに相談して申請手続きを進めて下さい。
生活期リハビリテーション
種類が豊富にあり、大きく分けるとこの3つです。
・通所リハビリテーション
・外来リハビリテーション
・訪問リハビリテーション
期間:回復期リハビリテーション退院以降
目的は、下記の①〜⑤です。
①自宅や自宅周辺で安全に過ごすことができる
②機能維持または改善
③廃用症候群の予防
④介助者の負担軽減
⑤自分らしい生活ができるようにする
生活期では、理学療法>作業療法>言語聴覚療法の順番で理学療法の活躍が多いです。
生活期リハビリテーション内容
通所リハビリテーション
・関節可動域練習
・筋力増強練習
・基本動作練習
・体力増強練習
・上肢機能練習
・下肢機能練習
・口腔機能練習
・嚥下機能練習
・バランス強化練習
・高次脳機能練習
・立ち上がり動作練習
・座位バランス練習
・立位バランス練習
・歩行動作練習
・応用歩行練習
・階段動作練習
・車椅子駆動練習
・車椅子移乗動作練習
・趣味活動動作練習
・家事動作練習
外来リハビリテーション
・関節可動域練習
・筋力増強練習
・基本動作練習
・体力増強練習
・上肢機能練習
・下肢機能練習
・口腔機能練習
・嚥下機能練習
・バランス強化練習
・高次脳機能練習
・立ち上がり動作練習
・座位バランス練習
・立位バランス練習
・歩行動作練習
・応用歩行練習
・階段動作練習
・車椅子駆動練習
・車椅子移乗動作練習
・趣味活動動作練習
・家事動作練習
訪問リハビリテーション
・関節可動域練習
・筋力増強練習
・基本動作練習
・体力増強練習
・上肢機能練習
・下肢機能練習
・バランス強化練習
・高次脳機能練習
・立ち上がり動作練習
・座位バランス練習
・立位バランス練習
・歩行動作練習
・屋外歩行練習
・階段動作練習
・応用歩行練習
・車椅子駆動練習
・車椅子移乗動作練習
・食事動作練習
・整容動作練習
・更衣動作練習
・トイレ動作練習
・入浴動作練習
・家事動作練習
・趣味活動動作練習
・買い物動作練習
・車乗車練習
通所リハビリテーション、外来リハビリテーション、訪問リハビリテーションで実施します。
介護区分などによって利用できる頻度や種類の併用などは異なります。
生活期リハビリテーションでは、後遺症がある中でも自分の生活が自立できる方法を模索し支援します。
理由は、多くの自宅退院をされた人は、自分でできない日常生活行為を目の当たりにすると、自分の存在価値を凄く低く考えてしまいます。
そして、よくある例として『引きこもりがち』になってしまいます。
そのため、できるだけ後遺症があっても自分の生活ができるように支援を進めます。
さらに、復職や家事、趣味など経済的、役割的価値を見いだすような作業活動に対しても介入をします。
理由は、経済的な安心を得るためや、自分を表現できる場所を提供することで心の安寧を図ります。
病前の生活と比較する患者様も多く、落ち込みやすい傾向があります。そのため、できる限り病前の生活に近づけるような支援や工夫を行います。
ただし、注意点があります。
仕事や趣味の支援では、特に失敗しない程度で難易度を考えて、段階的に進める必要があります。
病前のようにできない経験や失敗をすることで、諦めてしまう、悲観的になってしまうなど心に対してのダメージが大きくなります。
十分に段階付けて介入をすることが必要です。
まとめ
今回は、脳卒中の後遺症やそれらに伴うリハビリテーションやトレーニングの種類と流れについて解説をしました。
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最後まで読んで頂き、ありがとうございました。