今回は被殻出血における、被殻から内包前後脚に血腫進展が及ぶ被殻出血についての症状について解説を行います。
巻末に引用文献を記載しています。
目次
Ⅳa型:内包前後脚に及ぶ被殻出血

この上の図は、左から順番にI型からⅣa型に被殻出血の種類を並べています。
今回解説しているのは一番右端の被殻出血です。見比べるとわかりますが今回の被殻出血が血腫は一番大きくなります。
もっと詳細の部位についても理解して、臨床に生かしてほしいので下記に拡大した図を貼り付けておきます。

左は内包の構成図、右は今回の被殻出血をイメージした図になります。
このように”内包の前脚”、”内包の後脚”に血腫が進展した被殻出血をⅣa型の被殻出血と判断します。
では、今回の重要な部位でもある”内包の前脚”と”内包の後脚”についての役割(機能)を解説します。
内包って運動機能?
まず、内包についてですが前脚と後脚では働きが異なります。
前脚は高次脳機能
前脚では、主に感情、動機付け、認知処理及び意思決定などに関与すると報告をされています(Rushworthら2011年、Haberら2014年)。この機能は前頭前野から視床や脳幹部分に送信される経路であると言われています。
後脚は運動と感覚
後脚は、運動と感覚機能について重要な役割を果たすことが知られています。後脚の前半部分は一次運動野や運動前野に関する情報を末梢部に伝達する皮質脊髄路と皮質橋路があると言われています(Chowdhuryら2010年、Qianら2017年)。
また、後脚後部の1/3には視床から一次感覚野への主要な体性感覚の導線が含まれていると言われ、視床後外側核から後脚のこの領域を通過して中心後回で終わる感覚神経線維があると言われています(Hoonら2009年)。
このように、前と後脚では主に機能する内容が異なります。
ここまで、内包の前脚と後脚の機能について理解してもらったところから、症状は容易に想像できると思いますが、簡単に解説を行います。
Ⅳa型の被殻出血の症状
このⅣa型の被殻出血では、前述の内包の役割(機能)から下記の3つの症状が出現することが考えられます。
①運動麻痺
思うように腕を動かすことができない状態になります。内包の後脚への血腫進展程度によって麻痺の程度は変化すると思われます。
②感覚機能障害
触られた感覚や腕を動かしたなどと言った感覚(表在、深部感覚)が鈍く感じる(鈍麻)場合や分からない(脱失)する場合があります。
③高次脳機能障害
内包の前脚まで血腫が進展した場合は、感情の抑制ができず行動との動機付けなどを行うことができない状態に至ります。また、半分側空間無視や失語などと言った症状が現れる場合があります。
予 後
運動麻痺と感覚機能
まず運動麻痺と感覚機能についてですが、衛藤ら(1996年)の報告を見ると、発症から約120日経過した場合のⅣa型の被殻出血は11名のデータがあります。その中で、運動実用手までの回復は3名、補助手は1名、廃用手は7名と運動麻痺の回復は厳しい状態になり、感覚全員が鈍麻から脱失レベルと感覚機能は障害され回復は難しい可能性が高い傾向にあります。
日常生活の介護と自立度
日常生活の予後を説明する前に今回使用されているBarthel indexと言われる評価について簡単に解説をします。
これは、日常生活の食事、移乗、整容、トイレ 動作、入浴、移動、階段昇 降、更衣、排便、排尿の10項目を(項目により異なるが )それぞれ自立、部分介助など数段階の自立度に応じて、0、5、10、15点に分類し、ADLレベルを評価する 指標である。
今回のⅣa型では100点3名のみでした。しかし、Barthel indexはSchweickertら(2009年)はBI≧70点をADL自立群、BI<70点と定義しています。
これから考えると、 90点1名、85点2名、80点1名、75点3名、70点1名と高得点を取るだけの回復は可能な状態です。
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まとめ
今回解説したⅣa型は、被殻を含み内包の前後脚と血腫が進展した場合の被殻出血になります。
その被殻出血では、運動麻痺や感覚機能は改善が難しい場合が多いです。しかし、日常生活動作は自身で行うことができるようになる可能性が高い状態であると言われています。
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Chowdhury F, Haque M, Sarkar M, Ara S, Islam M. White fiber dissection of brain; the internal capsule: a cadaveric study. Turk Neurosurg. 2010 Jul;20(3):314-22.Qian C, Tan F. Internal capsule: The homunculus distribution in the posterior limb. Brain Behav. 2017 Mar;7(3):e00629.Hoon AH, Stashinko EE, Nagae LM, Lin DD, Keller J, Bastian A, Campbell ML, Levey E, Mori S, Johnston MV. Sensory and motor deficits in children with cerebral palsy born preterm correlate with diffusion tensor imaging abnormalities in thalamocortical pathways. Dev Med Child Neurol. 2009 Sep;51(9):697-704.被殻出血における正中神経刺激 短潜時体性感覚誘発電位 と上肢機能.衛藤ら(1996年)