前回はI型の被殻出血における症状と、予後などについて解説を行いました。
次はⅡ型についてのこれらの解説を行います。
Ⅱ型:内包の前脚に及ぶ
被殻や淡蒼球の一部とそれらより内側の内包と言われる部分の前脚の一部に血腫が進展した場合の出血になります。
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内包前脚の機能
Chowdhury Fら(2010年)によって内包前脚部分には、視床前部放射線維(anterior thalamic radiation)と前頭橋線維(frontopontine fibers)と言われる神経線維が存在します。
この部分の機能は記憶、認知、感情との関連が強いこともSafadi Zら(2018年)によって報告されている部分です。
これらのことより、内包前脚部分が損傷される被殻出血における場合は運動機能より、高次脳機能障害などが出現する可能性があります。
さらに、Greenbergら(2009年)の研究においても、内包前脚部分が帯状回のとの関連を示しており、内包前脚に異常が起きることで前頭前野などに対して支障をきたす経路が確認されています。
運動麻痺
内包前脚部分を含む場合は、上肢、下肢共に運動麻痺が軽度である場合が多いです。
感覚障害
認めても極軽度である。ただし、認知機能の異常により異常感覚などとして感覚を捉える場合がある。
高次脳機能障害
右半球損傷(左片麻痺)、左半球損傷(右片麻痺)によって重視される高次脳機能障害は異なります。例えば右半球損傷の左片麻痺患者の場合半側空間無視などと言った症状が出現する可能性があります。また、感情の脱抑制なども現れる可能性があります。左半球損傷の右片麻痺では、失語症が主として出現する場合があります。
機能予後
被殻を損傷しているものの、運動麻痺の回復は良好であることが多く、次に解説する歩行予後もそれらが反映される結果になっています。高次脳機能障害(失語症を含む)は、前述したように内包前脚が認知や記憶、感情と言われる部分と関与が強いことから軽度残存する可能性があります。また、失語症はCappaら(1983年)、Naeserら(1982年)、堀越ら(1993年)で報告しているように予後が不良な場合があります。
歩行予後
歩行はこの出血の場合についても、リハビリテーションやトレーニングを行うことで80%の人が自立に至るとされています。
まとめ
今回解説した、被殻出血における内包前脚へ血腫進展が及ぶような場合は運動麻痺は軽度にあるのに対して、高次脳機能障害の中でも認知、記憶、言語と言われる障害が現れる可能性が非常に高い出血の型になります。
Chowdhury F, Haque M, Sarkar M, Ara S, Islam M. White fiber dissection of brain; the internal capsule: a cadaveric study. Turk Neurosurg. 2010 Jul;20(3):314-22.
Safadi Z, Grisot G, Jbabdi S, Behrens TE, Heilbronner SR, McLaughlin NCR, Mandeville J, Versace A, Phillips ML, Lehman JF, Yendiki A, Haber SN. Functional Segmentation of the Anterior Limb of the Internal Capsule: Linking White Matter Abnormalities to Specific Connections. J Neurosci. 2018 Feb 21;38(8):2106-2117.Benjamin D Greenberg.Scott L Rauch,Suzanne N Hober.Invasive circuitry-basad neurotherapeutics:stereotactic ablation and deep brain stimulation for OCD.Neuropsychopharmacology:official publication of the American College of Neuropsychopharmacology,35(1),317-36.Cappa SF, Cavalott G, Guidotti M, Papagno C, Vignolo LA: Subcortical aphasia: Two clinical ̶ CT scan correlation studies. Cortex, 19: 227–241, 1983.Naeser MA, Alexander MP, Helm-Estabrooks N, Levine HL, Laughlin SA, et al.: Aphasia with predominantly subcortical lesion site. Arch Neurol, 39: 2–14, 1982.堀越 徹,永関慶重,小俣朋浩,橋爪和弘,貫 井英明,他:被殻出血急性期における言語障害 の推移.脳神経外科,21: 411–416, 1993.