被殻出血における症状と予後
今回は、被殻出血には内包の外側に限局した脳外科研究会が血腫進展を分類化したⅠ型の被殻出血と言われる出血があります。
この出血についての症状や予後予測について解説を行います。
I型:被殻出血(内包の外側に限局した出血)
I型の被殻出血とは下記の図のような出血です。
このように、被殻部分で出血は認める状態で、内包などに対して血腫の進展がない状態の出血のことを示しています。この場合の症状について解説を行います。
運動麻痺と感覚機能
山永ら(1985年)の被殻出血に特化した研究内容においては、軽度と言われています。(巻末参考文献引用記載)
感覚機能についても、正常もしくは軽度鈍麻であることが多いです。
高次脳機能
ただし、高次脳機能については内包及び被殻外側へ限局しているのが特徴です。
この図のように、被殻の外側には前障や島皮質と言われる部位があります。
この前障は睡眠の深い睡眠時期に徐波を出現させる機能や、島皮質は認知、感情、言語などとの関わりがあるとされています。
そのため、左脳の出血の場合言語の能力は言葉の理解や話しにくさ、使用したい言語が出てこないなどと言った症状が残存する可能性があります。また、水田ら(1994年)の論文でも被殻出血のより、外側に位置する場合の出血において言語機能の後遺症について解説をされています。
また、前障と言われる部位や島皮質と言われる部位に損傷がある場合は、認知や記憶などの障害が出現する可能性があります。また、前障をひどく損傷している場合は睡眠時に現れる徐波に対して悪影響を与える可能性があります。
機能予後
身体機能はこの出血は出血量も少なく、運動麻痺や感覚障害などの改善を見込める出血の形になります。また、山永(1985年)の報告においても上肢や下肢に運動麻痺をが出現しても予後は良好であることが報告されています。
ただし、高次脳機能は被殻出血における前方比や外側比の血腫進展が、FIMの認知項目における表出や理解、問題解決と相関していると若旅ら(2018年)が報告しており軽度から中等度で残存する可能性があると思われます。
しかし、基本的に日常生活活動はこの血腫進展ではそれほど阻害される可能性も低い可能性もその他の論文参考に感じることができるため大きな問題までに至る可能性は低いと仮説することができます。
歩行予後
澤島ら(2018年)の報告におけるとこの被殻出血の場合、内包に対して影響がないため歩行動作は自立レベルにリハビリテーションを行うことで達することが可能であると言われています。
まとめ
今回は被殻出血におけるI型の血腫進展(内包の外側に限局した出血)においての症状と機能予後について解説を行いました。
この血腫の場合は重度の片麻痺や高次脳機能障害を発症時に感じる可能性があるものの、リハビリテーションやトレーニングを行うことで比較的予後は良好であると言えます。
”被殻出血における正中神経刺激 短潜時体性感覚誘発電位と上肢機能”(衛藤ら1996年)
”記号素性錯語を呈した被殻出血後の失語症の3例”水田ら(1994年)
あくまで論文や臨床の経験から解説をしております。個人差は脳自体にあるため目安程度に参考にして下さい。