作業療法士が解説する脳画像解釈。あなたはどう解釈している?

管理人
本日もkaradasapo-to.comに訪れて頂き、ありがとうございます。僕も以前は間違った解釈を画像診断からしていました。しかし、こう考えるようになってからは様々な方向から症状の特定や介入方法を模索する方法などを考えるように慣れたのでこの解説をしていきます。

画像診断で症状を固定?

よく、画像診断(MRIやテンソルなど)で損傷の認められた部位で、症状の固定しようと必死になるひとがいるんですが、あくまで確率論にしかそれは過ぎないのです。
例えば、先日解説した被殻と感覚機能においても、被殻だけで考えると感覚障害が出現するのがおかしな解釈になります。また、頭頂葉病変で高次な障害が出た場合も同様に症状を特定する人もいます。
でも、それは無意味なんです。
脳は必ず、他の部位との連結を持ち関連性を持っています。
そのことについて例を出しながら、説明をします。
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症状と病巣特定の疑問

では、病態失認の病巣ってどこ?って聞かれても調べればわかりますが
①右頭頂葉病巣による、身体図式障害
②右頭頂葉病巣による感覚統合機能(morphosynthesis)
③間脳、辺縁系の異常やびまん性病巣による疾病否認
④左大脳半球への感情離断に伴う言語中枢の障害
など様々な病巣と病態失認がなぜ出現しているかの解釈は、それぞれによって異なります。

よく実習生が困るのはこれなんです。

実際学生が患者様にあって病態失認があると思っても、指導する療法士(バイザー)がこのような①〜④のように脳自体が様々な症状の引き起こす可能性があるまたは論じられていると捉えていない場合で且つ指導する療法士が①の知識しか知らない場合、学生が上記の②で調べてきたことをまとめると、指導する療法士は「いや、これ違うよ!」などと言って①の解釈を押し付けることになるでしょう。
しかし、病態失認についてオックスフォード大学のHilmannら(1993年)はこの症状について『覚醒-注意-企画システム』の症状で出現する可能性があると述べています。今はこの意見で統一されつつあります。
引用:HeiImann KM,Watson RT,Velenstine E:Neglect and related disorders. In:Heilmann KM,Valenstein E(eds):Clinical Neuropsychology,3rd Edition,Oxford University Press,New York,1993,p.279.
このように、病態失認においても①覚醒と関わる部位(辺縁系や間脳、延髄など)②注意機能と関わる部位(頭頂葉や基底核などの辺縁系との関わりが強い部位、前頭葉など)③企画システムと関わる部位(視覚から光の細分化を行う後頭葉や意味的言語符号を付け加える側頭葉、奥行きや影などを構成する頭頂葉など)それらが複合的に関与して初めて病態を捉えることができます。
このように、脳全体で様々な捉えた情報を複合的に概念化し、現代に存在する外界のことや内界のことを捉え、認知や行動するまでの過程が脳の役割と言えるでしょう。
なので画像診断において、詳しい脳自体の知識が無ければ、病巣と出現している症状の解釈を行うことでできません。だからこそ、調べて勉強して知識を蓄えてなぜを追求する必要があります。
また、このようなダイナミックな脳全体の捉え方は現在は主流になりつつあると僕は考えています。
ここからは実際に例を出して説明を行いたいと思います。
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画像診断をダイナミックに理解する

後頭葉からの神経の相互性

ここでは視覚-概念-運動企画を例に説明を行います。
運動を遂行するにあたって、運動に至るまでの視覚の処理は脳全体を使い一方向のシステムでは無いとAlbrightら(2002年)に報告しています。
下記のイラストが視覚から得た情報を、概念化して認知するまでの過程の一連です。
引用:Albright TD, Stoner GR.2002.Contextual influences on visual processing. Annu Rev Neurosci 25:339-379.
ここで、注目するのは部位ではなくて神経の相互方向です。
実際はフィードバックとフィードフォワードを行いある一連の活動や認知や記憶などを完成させています。

手の把握方法は神経の相互性が不可欠

また、手の構えや実際に物品を掴む動作においては、この相互作用を用いた『canonical neuron system』があります。下記の図を見てください。
この『canonical neuron system』は頭頂葉部分と前頭葉部分との相互神経作用を表す代表的なsystemです。
この経路では実際に運動を遂行するフィードフォワード機能が実施された後に、フィードバック機能として運動指令のコピー情報が再度PMvからAIPへと送信されます。
そして、そのコピー情報から実際に運動後に受ける感覚と感覚と照合を行い、運動のエラーなどを修正します。
しかし、この部分が損傷されると運動パターンの種類の幻滅や物品などの把持を、対象物に合わせて行えないような高次な障害が出現します。
また、前回に説明を行なった「被殻と感覚機能の関係」についても同様でこの被殻部分は前腹側運動野やその延長線上のその他の前頭葉部分との関係性を持つことで出力の制御などを行います。
その、被殻が正常に機能しない場合は、錐体外路から送信された情報が疎かになり、前頭葉部分で被殻からきた情報とこのcanonical neuron systemで作られた情報とが合致しないような状態となり、運動遂行の障害を様々な形で出現させる可能性があります。
上記の説明のように運動指令のコピー情報においてもcanonical neuron systemで構築された情報と、実際の運動が大きく異なれば当然、脳はエラーを察知し運動を行う方法についてさらなる抑制または、興奮などが生じて異常筋緊張や連合反応または課題処理知能についても、低下したような症状を出現させることも考えられます。
神経回路や機能局在をしる必要性はあります。
しかし、前に説明したように前頭葉のどこどこだからとかの特定の場所一部の限局された知識で、画像を読み解いても全く無意味です。
本来あるべきは、それぞれの部位がどのような連携を行い、何をどのようにいつどうやってしているかを紐解いていく必要があります。
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まとめ

画像診断を行い一部の方向性や、病巣の特定と現象を結びつけにおいては、様々な視点から物事を考える必要があります。
そのため、ある一方向による処理過程で神経の物事を考えずに、相互作用や後頭葉-側頭葉-前頭葉-頭頂葉のある特定の部位が相互に連携して活動や認知などを見出しており、様々な方向で症状を捉えていく必要があります。
また、連携している場所がわかればそこからフィードバックまたはフィードフォワードを行う部位の促通を図ることで間違い無く可塑性を引き出すことができるでしょう。
しかし、ここの脳活動全体の引き出しや活動を活発にさせる方法として、感覚の抑制機能などを理解しない場合(療法士本意の考えで行い、患者様の受け入れなどを気にしない方法)では促通を図ることができないので注意が必要です。
本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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