運動生成と感覚運動変換
人ってどうやって感覚と運動を切り替えて関節運動を行なっているの?
単純に麻痺手を動かすと言っても、その関節運動を行うまでのプロセスを理解しないと、到底理解できないため、簡単に説明を行いながら、今回のテーマへの話を解説していきます。
まず、椅子に座り目の前にコップがある状況を想像しましょう。
肘から先の手指までを机の上に置いている状態とします。
このコップを取ろうとした場合は、このように感覚的な場面から実際の運動へと切り替わります。
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①視覚による空間内の位置決定
ここに手があって、コップはこの距離でと目標物と自己身体の認識を行います。
②軌道を測定する
コップと手指の位置関係から、このように動かせば一番コップに効率的に手を伸ばすことができると言った、対象物と手指の距離から軌道を測定します。
③運動範囲を決定する
このコップは側面が丸く、滑りやすそうだから、肘はこの角度に、前腕は回外して手関節は背屈させて、手指はこれくらい開いてコップを掴む。掴む時の強さは、これくらいで掴めば効率良く把持することができるなど、対象物を操作する運動(関節可動や力など)を想定します。
④運動を実行する
①〜④の経過を経て、実際の運動を行う。また、運動中に対象物までの到達に至っては方向や力などの調節を行いながら運動を実行して目的動作を完結させます。
目的とする動作を行うような運動では、ほとんどの場合このように計画されて動作を完結させています。
では、この一連の動作において、脳卒中や脳梗塞などの運動麻痺に合わせて感覚障害を呈し、実際に動かしている四肢(上肢や下肢)を見ていない状態ではどのような運動となるのかを解説をしていきます。
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視覚で確認する必要性
麻痺した四肢を動かす場合は、視覚確認して動かした方がいい。
脳卒中などによる運動麻痺を患った患者様の多くは、感覚障害を伴うと報告されています。
その感覚障害のある状態で、目的動作に合わせて視覚で確認を行わないとどのような奇跡をだどるのかをGhezら(1995)が報告しています。
Ghezらの研究内容
この研究方法の課題としては、ディスプレイに表示された点と点の2点を、マウスを動かして線で繋ぐ動作を行います。
そして、課題を下記の4つに分けました。
①視覚で腕を確認した状態
②腕の注視を遮断して1分間動かす
③腕の注視を遮断して2分間動かす
④腕の注視を遮断して6分間動かす
A)一番左:視覚で腕を確認した状態、左から二番目:腕の注視を遮断して1分間動かす、左から三番目:腕の注視を遮断して2分間動かす、左から四番目:腕の注視を遮断して6分間動かす
結 果
結果はこのように報告されています。
腕を視覚で確認していることで、目標物に対して合わせて運動を正しく行うことができます。
次に②の条件では、①と比較して目標物から少しぶれるようになります。
そして③、④と腕を注視できない状態で運動を行ない、その時間を延長させればさせるほど誤差の範囲が広がるようになります。
また、上図のBやCはエラーしている目標物とのズレを㎝で記載し、時間経過を見ています。
その結果においても、時間経過と共にエラーする範囲は広がりさらに、それらは2回目も同様の結果を生み出す結果となりました。
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解 釈
この研究結果からわかるように、先に説明した感覚から運動へ切り替える動作には、視覚で確認しない場合においては非常に感覚機能が重要になります。
脳卒中(脳梗塞や脳出血など)運動麻痺に併発して感覚障害を伴う場合は、このように目的の対象物に対して運動の計画から実行までにエラーが生じている可能性が非常に高いです。
運動を行うなどの課題設定を行なっている場合は、必ず視覚で確認を行い目的物に対して正しい運動を促通していく必要があります。
その結果、目的としている動作が引き出され、運動麻痺の回復や感覚障害などの回復に対して前向きな影響を与える可能性があります。
まとめ
これらのことから、運動麻痺と感覚機能障害を同時に伴うような脳卒中(脳出血や脳梗塞など)や脊髄損傷など感覚機能の障害を伴うような場合の神経疾患は、視覚を利用して運動を行うことで正しい運動を引き出せる引き金になる。そして、機能の回復を促進させる一助になる可能性があるため、視覚での確認を動かしている麻痺肢に対して向ける必要があると思われます。
本日も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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