本日もkaradasapo-to.comに訪れて頂きありがとうございます。本日は『作業療法士が解説する。感覚は受動と他動を意識すると脳機能も変わる。』この内容について解説をしていきます。
目次
感覚機能障害の基本
感覚障害ってどんな症状?
脳卒中(脳出血、脳梗塞など)を患うことで、多くの患者様やお客様が障害を追う場合のある感覚障害。
一体どんなものかと言うと・・・
感覚がわからないまたは、過敏に感じるようになる。
このどちらかが基本になります。
そして、それらの程度の確認は簡単に説明すると
わからない場合の程度は、
重度、中等度、軽度で大きく分けて症状の程度を判断して行きます。
過敏に感じる場合の程度は、
痛く感じるのか?痺れているのか?など、
過敏に感じる痛みの特性を確認します。
これらに加えて部位を必ず確認します。
では一体こと感覚障害はなぜ起きるのか、簡単に解説をしていきます。
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感覚障害の原因
脳と感覚障害

脳卒中と言う病気では、前述したように高確率で感覚障害を患います。
脳の中の血管から血液が出血する脳出血や、
脳の血管の中に血液の塊などがつまる脳梗塞
などがあります。
その血管は脳に栄養を運ぶ導線であり、言わば栄養を届けてくれる道路なのです。

その道路が途中で陥没したり、通行止めになっているとどうでしょう?
その先に、栄養を運ぶことができない状態になることがわかると思います。

このように、栄養を運ぶことができなくなると、その先で栄養を待っている脳神経細胞(日常生活で言う荷物を受け取る受け手)は壊死してしまうんです。
当然です。必要な栄養が届かなければそうなってしまいます。
普段の生活でいうと、宅急便のようなものです。
一向に荷物は届かない状態になります。
ま!普段の日常生活であれば再配達や他の道を使うなどの方法をとることができますが、その範囲であれば脳の中でも本当に細い、細い血管ですが、実際に運動麻痺や今回解説している感覚障害などの症状がでる場合は、県をまたぐ道路全てが一気に寸断されたような状態のことを示す状況が頭の中で起きる状態になります。
このような結果、脳神経細胞に栄養を届けることができず、結果的に感覚を作り出している脳細胞が活動できない状態となり、感覚障害をきたします。
では、実際の脳内の導線について、今回のテーマに合わせて感覚の中でも、触覚と言われる感覚を例に出して今回のテーマである受動と他動の感覚と脳処理についての解説を続けて行きます。
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感覚機能。
感覚ってどう感じるの?
感覚機能には、一般的にわかりやすい皮膚の感覚(表在感覚:触った感触や痛み、温もりなど)があるんですが、その他にも深部感覚や固有覚などまた、視覚や聴覚など感覚機能は一言でも、たくさんの種類があります。
本日解説している受動と他動の感覚機能と脳処理の解説においては、表在感覚と言われる感覚機能を主として解説を行なって行きます。
まず、表在感覚は基本的に何かに触れる状態で初めて感じる感覚になります。
例えば、あったかい飲み物の入ったカップを手でとった時に、「あったかい」そして、そのカップに触れると「ツルツルしている」「湾曲に曲がっている」などと言ったカップの肌触りと、カップの中身についての温度感覚について認識します。
例であげた情報は一体どうやって脳まで伝達されるかと言うと、下記の図に示すようになります。

まず指先には感覚を感じる受容器と言われるものが無数に埋め込まれています。
この受容器と言われるものは、センサーの役割をしておりそれぞれから受ける圧力による刺激強度の連続性を認識します。
次に、この受け取った情報を神経を通して指先から、腕、上腕、肩、首、脊髄、脳へと神経を通して、脳の方へ伝えます。
そして、脳でこのセンサーから受けた刺激がどんなものであるかを統合して、初めて感覚を感じるようになります。
また、脳の一次感覚野と言われる部分に至るまでに、感覚の強さなどが入力制御系と言われる部分などで調節されます。
このように感覚は、指先からの情報を脳に伝えて初めて形成されます。
もっと詳しくこの経路を説明したいところですが、今回のテーマまで他取り付けなくなるので、また今後解説をして行きます。
ここまでで、脳はどうやって触ったものなどを感覚として捉えて認識しているかざっくりわかったと思うので、ここから今回のテーマでもある受動と他動に感じた感覚が、脳処理でどのように変化するか解説をして行きます。
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感覚機能と脳画像
自ら触れることの意義
では、本題の解説をしていきます。
よく臨床で、感覚機能練習を行う場合において、
①物体(筆やタオル、スポンジなど)を療法士やセラピストが持って、対象部位をそれらでなでて触れてもらう場合
②物体(筆やタオル、スポンジなど)を机上または手のひらなどに置き、お客様自身または、軽くアシストして自ら握るように促しながら物体に触れる場合
この2種類があると思うんですが、あなたはどちらで感覚機能練習をしていますか?
この2通りの方法でも、脳の感覚処理機能は変化します。
代表的な研究では、Hinkleyら(2007年)が行なった研究が有名です。
この研究対象は13人の健常者に対して、磁気共鳴機能画像装置(fMRI)と脳磁図(MEG)この2つの装置を利用して検討を行われています。
fMRIでは、
①スポンジを指から手のひらを他人がなでる場合(Tactile)
②手に置かれたスポンジを自ら手指全体を利用して触る場合(Tactile+Movement)
この2つの方法で、活動部位の特定を行なっています。
MEGでは触覚刺激装置(空気)から出される感覚を、
①人差し指を伸ばした状態の指先に当てる場合(Tactile)
②自ら曲げた人差し指を伸ばして空気を触る場合(Tactile+Movement)
この2つの方法でそれぞれ比較をされています。
上記の内容として、
Tactileの①が受動的(passive)に感覚を受け取る
Tacitle+Movementの②が能動的(active)に感覚を受け取ります。
これらの感覚入力の差で脳機能を確認をしたところ、面白いことがわかっています。
どちらも、感覚は入力されるのですが能動的(active)に、物体から受ける感覚を触りにいく方が、前帯状皮質(anterior cigulate cortex:ACC)や吻側腹側頭頂葉(pariental rostroventral:PR)と言われる部位が促通されます。
受動的に行なった場合は、それらの脳活動は行われません。
これらの内容として簡単に図で示すと下記のようになります。

この上の図で説明するように、単純な療法士やセラピストが患者様の対象部位をなでるような動作(受動的)なは、感覚機能を感じるとる一次感覚野(S1)と二次感覚野に対しての働きかけはあります。
しかし、それだけでは感覚を認識しているに現状の研究では留まり、学習機能や感情機能などの賦活には至っておらず、一向に感覚の認識を促通できない状況下にあります。
そのため、受動的な感覚練習では改善が非常に難しい状態になります。

上記の図は『自ら触りにいく能動的(Active)動作での神経賦活経路』です。
この経路の赤線部分が特徴になります。
①S2から直接M1に行く経路
②S2からPR、ACC、M1にいく経路
この2つの経路が能動的な感覚入力では産まれます。
このように、受動と能動では能動的な動作を含む感覚入力では脳の中でも多くの部位が活動を示します。
ACCは、辺縁系などとの繋がりが強い場所でもあります。
そのことによって、感情や記憶などとの結びつけを産む可能性があります。
また、ACCの賦活は上記の図のようにM1まで刺激を伝達する経路でもあります。
そのことによって、前述した辺縁系などを通して学習経路などを刺激しながら、感覚経路の賦活を行うことで受動的な感覚練習よりも、能動的な感覚練習を行う方が治療効果としては高い可能性があります。
そして、PRは3a野部分の神経の関係性があると言われています。
また、3a野は手の動きについての認識していると言われています。
動きを認識する事で、より多種多様な感覚要素を必要とするため、今回解説している表在覚のみならず、固有感覚や深部感覚にも影響を与えていく可能性があります。
また、S2から直接M1の神経伝達は運動機能そのものの賦活に繋がっていることが考えられます。
このように、感じながら自ら動くことで感覚機能はより強固に賦活されます。
しかし、一つ懸念するのは、今回の研究で報告されている内容が非常に単純な課題である事です。感覚量の問題と課題難易度の設定には、脳の抑制機能や興奮機能などのunbalanceを産出する可能性がります。
学習を進める上では、基本的な難易度設定なども報告されています。
この難易度については、今後解説します。
感覚機能練習を行う上では、療法士やセラピストがなでるのではなく、感覚機能の再建と学習の促通観点から、自ら触りに行くような課題設定を行うことで感覚機能の促通になる可能性があります。
本日も最後まで、読んで頂きありがとうございました。
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引用
・Hinkley LB. Krubitzer LA, Nagarajan SS,Disbrow EA.2007. Sensorimotor Integration in S2, PV, and Parietal Rostroventral Areas of the Human Sylvian Fissure.J Neurophysiol 97:1288-1297.
・工藤 佳久.もっとよくわかる!脳神経科学。やっぱり脳はすごいのだ!
・粳間 剛.リハビリPT・OT・ST・Drのための脳画像の新しい勉強本.
・Eric R,Kandel:カンデル神経科学