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今回は
「感覚の同期性、非同期性を判断する。縁上回の機能と症状の理由を解説」
このテーマから、縁上回が損傷されると注意機能障害を呈することを理解して頂きたいと思います。
では、早速解説を進めさせて頂きます。
よろしくお願いします。
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同期性とは
今回使用している同期性とは、
身体に入力された感覚が
「合体して理解する」
と言うことを示します。
例えば・・・
パソコンをタイピングして画面に文字入力を行なっているとしましょう。
その際に画面を確認している視覚
キーボードを触れている触覚
タイピングした時の音の聴覚
など複数の感覚が同期されて、パソコン操作を可能にさせています。
しかし、一つでも感覚がかける(触覚が低下するとキーボードから受ける触覚がなくなる)と、動作の効率は劣ることが想像できますよね。
Emst MOら(2004)は、この同期性と非同期性について・・・
「異なった感覚により入力された信号が同一の事象に属すると知覚されるには、時間的順序の情報が不可欠である」
と報告しています。
そのため、感覚機能の同期性や非同期性が乱れることによって、日常生活に大きな支障をきたしてしまいます。
そして、これらの症状が脳卒中などの脳に対して悪影響を及ぼす疾患では、多々認められます。
優位半球(左半球)では、
失行(apraxia)が前述した内容を大きく受けた後遺症です。
劣位半球(右半球)では、
注意障害が前述した内容を大きく受けた後遺症です。
そのため、これらの症状を認める場合、注意検査を行うと視覚性、聴覚性などの注意障害がほとんどの確率で合併して出現します。
そのことの説明として、下記の論文のように多彩な高次脳機能の症状について報告されています。
例論文
・「失行を中心に多彩な認知機能障害を呈した、脳梗塞症例に対するリハビリテーション」:鈴村ら(2016)
・「右頭頂・側頭葉病変後に使用行動、模倣行動を呈した1例」溝渕
・「口・顔面失行(BFA)の症状と責任病巣:行動理論から見た失行症の出現メカニズム」遠藤(1994)
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左右半球による症状の差異
右縁上回付近損傷(劣位半球)
以前投稿させて頂いた、半側空間無視が代表的に出現します。
無料!縁上回と左半側空間無視。ネットワーク損傷と半球間抑制について。
この症状に合わせて
・構成失行
・着衣失行
・立体視障害
・視覚的定位障害
・動作維持困難
・身体失認
・病態失認
・韻律障害
視覚に依存して且つ空間の問題(図形などの形に依存している症状)が出現します。
このことより、言語では説明できるが
視覚の情報(奥行きや傾きなど)の画像処理が行うことができなくなります。
そのため、言語に依存している症状(話す、計算、読むなど)が現れることは、非常に稀です。
逆に、左半球(優位半球)では言語野(ウェルニッケ野)が非常に発達しています。
そのため、左半球の縁上回が損傷されると、
ウェルニッケ野から伝達された言語的な情報に依存したような症状が強く出現します。
・観念失行
・観念運動失行
・構成失行
・失算、失書、失読、左右失認(Gerstmann syndrome)
が現れます。
おまけ
ウェルニッケ失語が併発して出現することがあります。
ウェルニッケ野の詳細についてはこちらを参照にして下さい。
この同期性と非同期性の混在により、これらの例論文で示したような注意機能を基盤とした高次脳機能障害が出現し、目的動作ができなくなってしまいます。
では、この縁上回に感覚入力がどのように行われるのか、神経経路についてイラストを使用して解説を行います。
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縁上回が受ける感覚入力
縁上回は図に示すような位置にあります。
(画像クリックで拡大表示)
この図で示す赤の矢印部分が縁上回への感覚入力経路を示してします。
今回視覚、聴覚、触覚について下記のように整理しましたので、是非参考にして見てください。
(画像クリックで拡大表示)
このようにそれぞれの
感覚経路によって最終的には
縁上回で感覚の同期が行われます。
縁上回は・・・
これらの感覚を受けて
島皮質と前頭葉、ブローカー野などへ
同期した情報の伝達を行います。
そして、運動野へ情報が移行されて運動表出へと至ります。
この視覚と聴覚の関係と縁上回の機能について分析された研究報告があります。
積山(2001)は縁上回の機能について、聴覚刺激をA、視覚刺激をV、視聴覚刺激をAVと条件を振り分けて、脳活動の分析を行なっています。
それらの課題で活動を示した部位として
縁上回と連絡路をもつ
・聴覚領域(BA21/22)
・後頭側頭回(MT野またはV5、BA37/29)
そして・・・
・縁上回(BA40)そのもの
が活動していることを報告しています。
・「視覚における情報統合:音声知覚時の視覚と聴覚の情報統合」積山 薫(2001)
このように邦文においても、縁上回と感覚統合についての研究が進んでいて、縁上回は感覚から受ける情報の同期性、非同期性について非常に重要な中枢部として機能しています。
この感覚の同期性についてはある一定の時間的順序があるので
代表して視覚と聴覚について解説していきます。
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同期性と非同期性の順序
Welford AT(1980)やBrender JT(1980)そして、伊奈(2014)によって視覚と聴覚の同期される順序についての報告があります。
この2種類の感覚に限っては、
聴覚情報が先行して入力され
その後に視覚刺激が入力される
と報告されています。
さらに、非同期性と言って視覚情報と聴覚情報がずれていると判断する場合においても、縁上回が機能していると報告しています。
・Welford AT: Choice reaction time: Basic concepts. In A. T. Welford (Ed.), Reaction Times, Academic Press, New York, pp.73-128, 1980.
・Brebner JT and Welford AT: Introduction: an historical background sketch. In A. T. Welford (Ed.), Reaction Times, Academic Press, New York, pp.1-23, 1980.
・Takahiro Ina :「機能的MRIを用いた視聴覚刺激同期判断課題における非同期判断に関わる脳活動の検討」日本感性工学会論文誌 Vol.13 No.1(特集号)pp.1-6(2014)
まとめ
これらから、縁上回が損傷することで、感覚の統合に必要な同期性や非同期性機能の破綻を招き、前述で説明したような、注意機能の低下やそれに伴う失行や失算、失書などの高次脳機能障害を好発しやすい部位としておさえて置く必要があります。
また、これらが理解できることでどの感覚由来の症状が出現しているのかを突き止めることによって、代償方法やリハビリテーションの内容や難易度などを工夫して進めることができるのではないかと思います。
本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。