本日もKaradasapo-to.comに訪れて頂き
ありがとうございます。
運営管理を行っている
作業療法士のUNLです。
よく細々とした説明を、患者様やお客様に
運動療法時やリハビリテーション時に
行ってはいませんでしょうか?
そうした場合、患者様やお客様には
十分にわかってもらえずなかなか、
運動学習が進まない場面を
体験したことはないでしょうか?
その体験について・・・
今回はワーキングメモリーの観点から
説明を行いたいと思います。
自主練習も含めてですが、
どの程度の説明を患者様に行い
覚えて頂くようにするべきか
報告を参考に、説明をさせて頂きます。
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ワーキングメモリとは
この記憶は1974年に
・Alan Baddeley
・Graham Hitch
「ワーキングメモリのマルチコンポネート理論」
を提唱されて、今日に至るようになっています。
引用:Baddeley,A,D.Hitch,G.J.(1974).Working Memory,InG.A.Bower(Ed.),Reecent advances in Learning and motivation(Vol.8,pp.47-90),New york:Academic press
日本語は「作業記憶」。
記憶機能の種類は
「短期記憶の一部」
として捉えられています。
そして、一体どんな記憶かというと・・・
「〇〇をしながら覚える」
ような記憶のことを示しています。
例を出して説明を行います。
例1は計算のワーキングメモリ説明
例2はリハ中のワーキングメモリ説明
例1:56÷2=A 248÷4=B A+B=C
この計算を頭の中でAを求めてAを覚えながら、
Bを回答しBを記憶に保持して、
最終的にA+B=Cを求めるような記憶
例2:歩行しながらセラピストが言っている歩容の工夫内容について理解して、効率良く歩く
歩行=転倒しないこつを覚えながら、
セラピストが言っていること=歩容のことを覚える
最終的に転倒しない歩行方法を思い出す+歩容に関することを覚える=効率良く(早く、綺麗に、距離の延長)歩く
この例2のように
常に運動療法やリハビリテーションの場面では、
「ワーキングメモリ」という
記憶が付きまといます。
そして、この説明が上手ければうまいほど
患者様やお客様は記憶を保持して
運動学習で効果を発揮できるようになります。
前述させて頂いたように
このワーキングメモリは
記憶の種類でも短期記憶の一部
と言われる記憶機能に分類されています。
そこで次項では・・・
・短期記憶の容量説明
・最近のワーキングメモリの容量
の説明を行います。
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短期記憶の容量について
ワーキングメモリより先に提唱された、
短期記憶の容量は、Miller(1956年)によって
「マジカルナンバー7±2」
と言われる報告がされています。
これは、短期記憶で単語や数字を
平均的に記憶保持できるのは・・・
7±2個
と報告されました。
さらに、研究は進み・・・
・数字は約7個
・文字は約6個
・単語は約5個
と概ね現在はこのように整理されています。
そして、Hulmeら(1995年)は
「その単語を知っているか」
によっても保持される容量は
左右されるといった報告がされています。
ここまでの報告まとめ
・短期記憶には容量制限がある。
・容量説明として「マジカルナンバー7±2」という報告がある。
・数字、文字、単語で覚えられる容量が変化する。
・その言語を知っているかによっても容量は左右される。
ここまでは短期記憶という概念で解説を行いました。
ここからは、長期記憶との関係について解説をします。
長期と短期記憶の連絡
(LtWM理論)
研究は発展していき、
EriccsonとKintch(1995年)らによって
「Aをしながら Bを行い Cを生み出す」
このような場合は・・・
Aは今回体験する前から行っていて長期記憶として保持
または、言語化して長期記憶で保持されている場合
Bを短期記憶として引き出し
Cを生み出すような形になっている。
これらのように
Aの長期記憶
Bの短期記憶
このABが相互に連絡を行いCを生み出す
ような記憶機能の相互作用について報告している。
この記憶機能のことを
長期ワーキングメモリ
Long-term working memory
と言われています。
このことから長期記憶を利用することで、
保持することが同様の内容でも容易になる場合があります。
主に読書などでは、慣れた言語かつ自分が体験した言語が使われていて内容を覚えながら、新たな話を覚えていくことができるようなシステムとなっています。
仮に、知らない言語が使われれている本は上記のように慣れた言語より難易度が増して、同様に覚えながら新たな話を覚えて行くには、前述の読書より労力が必要であり保持するのに時間を要するようになります。
例えば歩行の運動療法を行う際に
「こうすれば転倒しなくて歩行ができる」
という自身の体験から長期記憶に体験として
保持されている場合は・・・
今までの体験から(長期記憶)
転倒しないバランスの取り方の記憶を引き出し
新たに保持している(短期記憶)
歩容の記憶を優先的に引き出し保持する
その結果・・・
効率的な歩行ができる状態となる。
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ワーキングメモリの容量
世界では数多く報告されていますが、
これまでの説明まででもわかるように
体験などによって結果は左右される
危険性があります。
そのため、本邦でも代表的に報告されている苧坂先生の論文を参考に紹介させて頂きます。
苧坂によるとワーキングメモリの容量は
「保持できるアイテム数は3から4」
と報告されています。
そのため、これ以上の
ワーキングメモリによる負荷は
リハビリテーションや運動療法時に
避ける必要があります。
でなければ、過剰負荷となり
運動学習の敵となり
本来獲得するべき運動学習効果を
図ることはできない状態となる
可能性があります。
ワーキングメモリとチャンク数
また、ワーキングメモリには
「チャンク数」
というものが関与していると言われています。
チャンク数とは、
「連続した数字や文字を切り分ける数のこと」
を意味しています。
例1:携帯番号を覚える
チャンク数1個
携帯番号〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇と連続して覚える場合は、チャンク数は1個となるが、短期記憶の容量を超えた容量となり覚えにくい。
チャンク数3個
しかし、多くの人はチャンク数を多くして〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇と-のように区切りチャンク数を3個にして、短期記憶の容量内に数字を並べて覚えている。
聴取して支援する理由
ここまでの解説で、長期記憶の重要さは
ご理解して頂けたと思います。
・バランスをとって歩くことを意識する
・片足立ちなどを行うような運動をする
練習を日々行ない
日々バランスを意識して
これらについて向き合って
おられる方は人は少ないです。
そのため、何十年も昔となる場合や手続き記憶と言われる無意識の記憶へ変換されており、有意識で引き出すことができず非常に苦難となり運動学習を図ることが難しいです。
そのためにも、普段からお客様や患者様が行っていた環境や特徴的な動作をバランスの練習や歩行の練習に取り入れて行うことで、長期ワーキングメモリーを引き出し、効率的な運動学習を進めることができると思われる。
これらの内容を参考に自主練習を作成する場合に、記憶容量と関連づけて記載をする場合の工夫方法について例をあげてここからは説明を行いたいと思います。
自主練習作成と記憶容量
まず、今までの自主練習シリーズで解説したことを参考にして頂きながら今回のことも意識して頂きいたと思います。
※自主練習シリーズリンク
・自主練習で運動学習を図るには?リハでの練習法の違いについて
・やる意味あるの?運動麻痺に対しての自主練習(脳の可塑性を中心に)
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自主練習作成例
症例食事情報
食事動作ときに必ず、器を左手で持ち食事をとるようにしていた。
失敗例
・食事動作で主食のみ利き手でもある麻痺手でスプーンを使用する
と記載したとします。
この記載方法では、セラピスト側は練習で行った動作を思い出してやってくれるでしょう!ともちろん思いこむと思います。
しかし、それは勝手なセラピストの判断であり、患者様やお客様にとっては麻痺手を使って食事をすること自体が初めてで苦悩の活動かもしれません。
そのため、効率的な運動学習を記憶機能を使って行うことは、難しい場合があります。
また、麻痺手でなんとか食べなければいけないという強迫観念から麻痺手の過剰努力により、誤った運動方法の学習をしてしまう可能性があります。
工夫例
・お椀を左手で持ち 掬いやすいようにお椀を傾け スプーンを使い 主食のみを食べるようにする
この文面では、普段主食を食べている際も掬いやすいように傾けていたという体験の長期記憶に保存されている動作を引き出しから取り出し、そして麻痺手でスプーンを使って食べるという短期記憶を利用したような文面にする。
さらに、記載ではチャンク数を使用して、より文面から難しいことを言われていないように通じるようにするのも一つの方法かと思います。
まとめ
今回は短期記憶の容量と、ワーキングメモリーの容量などについて触れながら、記憶容量を考慮した自主練習の作成例について解説を行いました。
運動麻痺を患った患者様やお客様は、全てが初めての体験だと思い関わる必要がある。
また、セラピストや療法士の尺度で活動を想像せずに、事細かく情報を聴取して自主練習などによる、運動学習を図る必要があります。
本日も最後まで読んで頂き
本当にありがとうございます。