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前回の記事でもある「外側皮質脊髄路」。
この記事に続いて今回は・・・
「皮質-網様体脊髄路」
についての解説を行います。
皮質-網様体脊髄路においても、外側皮質脊髄路に続いて神経障害を患うような疾患脳出血、脳梗塞、脊髄損傷、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの患者様の治療や練習においては非常に理解を深めておくことが重要な神経であるため、ぜひこの記事を読んで頂き確認と復習を兼ねて行い、患者様に質のいいサービス提供を行うようにして下さい。
では、早速ですが皮質-網様体脊髄路についての解説を進めて参ります。
よろしくお願いします。
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下行運動神経路の種類
内側運動制御系と外側運動制御系
脳から運動を起こす神経経路として、
「錐体路」と「錐体外路」
という2種類が存在します。
Alexander GEらは1990年にこれらの神経をさらに
2種類に大別した報告をしています。
・Alexander GF,Crutcher MD: Functional architecture of basal ganglia circutis:neural substrates of parallel processing.Trenda Neurosci 1900;13:267-271
体幹や肩関節、股関節などの
中枢部分に寄与する神経=内側運動制御系
片側の手指や足先などの
末梢部に寄与する神経=外側運動制御系
この2種類に大別されています。
今回解説させて頂いている
皮質-網様体脊髄路=内側運動制御系
の神経となります。
また、加えて前庭脊髄路、視蓋脊髄路などが関与していると言われています。
内側運動制御系神経の役割
・中脳では立ち直り反射
・伸張反射や屈曲反射(脊髄)
・緊張性頸反射(延髄)
・迷路反射や前庭動眼反射(延髄〜橋)
などの姿勢反射の役割が多いです。
ここまでの説明で、
内側運動制御系=バランス機能に寄与する
ことがこれらからも理解できると思います。
これらを理解してもらった上で、内側運動制御系の中でも皮質-網様体脊髄路の経路と具体的役割をここからは解説をします。
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皮質-網様体脊髄路の経路
通過経路として図のように・・・
1:大脳皮質の補足運動野、運動前野(第6野)
2:中脳、橋、延髄の内側の網様体を通過
3:同側の脊髄の前索、前側索を通過
4:脊髄の前角細胞の運動細胞に投射し
5:末梢神経を経由して筋肉の収縮や弛緩を起こす。
Point!!
経路の1〜2番目の投射のことを
皮質-網様体投射(Cortico-reticular projection)
と言います。
そして、外側皮質網様体より
約100mm秒先行して機能します。
図引用:高草木 薫 AMCoR 「ニューロリハビリテーションにおけるサイエンス-臨床と研究の進歩-」運動麻痺と皮質網様体投射脊髄損傷ジャーナル(2014.02)27巻2号:99〜105.
また、これらの経路は論文でも紹介されており、大脳皮質から網様体へ投射される神経は非常に密接であり強く連結しているKablyら、Matsuyama KとTakakusaki Kらが報告しています。
・Kably K,Drew T : Corticoreticular Pathways in Cat.I.Projection Patterns and Colloterization.JNeurophysiol 80:389-405,1998.
・Matsuyama K,Takakusaki K:Chapter XVⅢ.Organizing principles of axonal projections of the long descending reticulospinal pathway and its target spinal lamina VⅢ commissural neurons:with special refrence to the locomotor function. In Westland TB,Calton RN(ed):Handbook on White Matter: Structure , function and Changes, Nova Science Publishing Co. New York, USA, 2009,pp335-356.
皮質-網様体脊髄路の役割
1:皮質-網様体脊髄路と体幹機能
Drew Tらによって起立や歩行に必要な
・全身の筋緊張レベルの調節
・体幹と上下肢のアライメント調節
(postural figureの生成)
に重要な役割を果たすと言われています。
・Drew T, Rossignol S: Functional organization within the medullary reticular formation od the intact unanesthetized cat.Ⅱ.Electromyographic activity evoked by micro stimulation. J Neurophysiol 64: 782-795,1990.
2:皮質-網様体脊髄路と姿勢制御
・構えの姿勢
「postural setまたはready」
・予期的姿勢調節
「Anticipatory postural adjustment : APA」
など巧緻動作を行う上での、
姿勢制御に対して関与していると報告されている。
Takakusaki K : Neurophysiology of gait; From the spinal cord to the forebrain. Mov Disord 28:1483-1419,2013.
予測的姿勢調節の例題
立っている状態で何かを取ろうとした時に、足を動かす。その結果、立っている状態でも安定して立った状態でも上肢を用いて物を取ることができるようになります。
この例題の中でも・・・
「倒れないように足を動かす」=姿勢調節
この動作には、皮質-網様体脊髄路が機能し
姿勢制御の役割を果たしていると言えます。
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2:皮質-網様体脊髄路と予測的行動戦略
前項の姿勢制御と関連が強いのは「予測的過程」で、
「予測を可能にする脳の高次機能」
として代表的な報告には、Brooksらの報告があります。
・Brooks VB:Ⅲ Posture and locomotion in ; The neural basis of motor control. Oxford University Press,1986,pp140-150
「予測を可能にする脳の高次機能」には
皮質-網様体脊髄路の開始部が影響している
と言われています。
経路について説明させて頂いた内容の中で
補足運動野や運動前野(6野)
が関与していると説明させて頂きました。
そこで・・・・・
Tanji Jらや、Jacobs JVらは
この補足運動野の部分で
・運動の準備や運動の順序
・姿勢制御
に関与していると報告をしています。
これらより・・・
皮質-網様体脊髄路=予測的な姿勢制御
を行う中枢部分でもあります。
・Tanji J: Sequential organization of multiple movements: involvement of cortical motor area. Ann Rev Neurosci 24 :631-651,2911.
・Jacobs JV, Lou JS, Kraakevik JA et al: The supplementary motor area contributes to the timing of the anticipatory postural adjustment during step initiation in participants with and without Parkinson’s disease.
3:皮質-網様体脊髄路と連合反応
連合反応の理解には外側皮質脊髄路の機能についても理解しておく必要があるため、必要に応じて「外側皮質脊髄路って?経路と血管供給とその機能について」も読んで頂きより理解を深めて下さい。
この外側皮質脊髄路は
延髄での錐体交叉を経て、
受傷した脳と反対側の
手足の巧緻な動作を実行させるのに、
非常な重要な神経経路です。
そして、皮質-網様体脊髄路は
両側の体や肩、股関節などの
中枢部を末梢の運動に合わせて
協調的に動かすような
「予測的姿勢制御」「バランス機能」
についての関与が強いです。
これらから、
外側皮質脊髄路=巧緻な動作を行う
皮質-網様体脊髄路=姿勢制御を行う
これらの神経によって中枢部と末梢部で協調的な動作を行うような仕組みになっています。
これら2種の神経が行き着く脊髄には
上肢=屈曲優位
下肢=伸展優位
に作用する運動細胞が存在しています。
そして・・・
巧緻な動作を行う外側皮質脊髄路が
それらの細胞に対して抑制的に働き
皮質-網様体脊髄路の興奮性を調節します。
では・・・
外側皮質脊髄路が損傷すると?
手や足先の巧緻な動作が行えない分どうします?
(外側皮質脊髄路の破綻 =運動細胞の興奮性亢進)
体のなどの中枢部を用いて
代償動作を行うようになりません?
(皮質-網様体脊髄路の興奮 =運動細胞の再興奮性の亢進)
これらにより、前述させて頂いた
上肢屈曲細胞
下肢伸展細胞
の興奮性が外側皮質脊髄路が破綻することで
抑制されず、運動細胞が亢進される。
結果、連合反応としてパターン化しているような
上肢屈曲、下肢伸展での反応が出現するように
なってしまいます。
これらの代表例として、
片麻痺では
「Wernicke-Mannの肢位」
が連合反応によって強化されます。
AMCoR 「ニューロリハビリテーションにおけるサイエンス-臨床と研究の進歩-」運動麻痺と皮質網様体投射脊髄損傷ジャーナル(2014.02)27巻2号:99〜105.
まとめ
下行性神経路には内側系と外側系が存在します。
内側運動制御系は体幹や肩、股関節などの中枢部に寄与。
外側運動制御系は手や足先なの遠位部に寄与。
皮質-網様体脊髄路は、内側系運動制御になる。
皮質-網様体脊髄路は「姿勢制御」「予期した行動戦略を伝える」「連合反応に関係」がある。
本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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