今回は肩関節の痛みの中でも見落としがちなQuadrilateral space syndrome(QLS:QLSS)について解説を行います。
よく肩関節の疼痛を訴えられる患者様やお客様の中でも、筋肉の筋緊張や反射の問題から肩関節周囲の筋短縮によりこのQLSやQLSSを発症していることが多いため今回は記事にして図を用いて解説を行います。
①QLSの構造について
②QLSの狭窄に伴う血管造影
③QLS、QLSSの症状について
④QLSの対処方法とストレッチを行う箇所と方法
についての4つの項目で解説を進めて参ります。
では、よろしくお願いします。
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QLSの構造について

正式名称はQuadrilateral spaceと言い略してQLSとなります。
このSpaceには、血管と神経が通過しています。
そして、丁度脇の部分に当たる場所で筋肉によって四辺形のSpaceを構成しています。
これらから、Quadrilateral spaceと言われるようになっています。
基本的には図で示すように筋肉は三頭筋長頭、大円筋、小円筋で構成されています。
時折広背筋が関与している場合もあります。
そして、黄色点線で示すような四角形のスペースについてQLS(Quadrilateral space)言います。
このQLSには神経の他に動脈と静脈が通過するようになっています。
通過する神経は、腋窩神経です。
通過する血管は、後上腕回旋枝動脈と後上腕回旋枝静脈の2本が通ります。
ここまでの解説でわかるように、このスペースとは肩関節のいわゆる腋窩部分に存在し、神経や血管が通過しています。
ではこのQLSが関与する症状についてここからは解説を行います。
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QLSの狭窄に伴う血管造影

QLSが障害、狭窄されて後に紹介しているような症状を発症する場合は、基本的にQuadrilateral space syndromeと言います。
この左に示す図は実際にQLSが狭窄されている患者の血管造影画像になります。
図の説明(同一者での肩関節血管造影画像)
a:何もしていない状態での右肩関節。しっかりと後上腕回旋枝動脈が造影されています。
b:肩関節を外転、外旋させた際に後上腕回旋枝動脈が止血され途中で途切れたようにaの写真と比べて造影されています。
c:何もしていない状態での左肩関節。しっかりと血管が造影されています。
d:b同様のポジションを左肩でも運動しているものの、後上腕回旋枝動脈は造影されています。
このように、Quadrilateral space syndromeに陥ると血流が一時的に血流を阻害されるようになります。
また、後に症状について解説を行いますが、重度の場合前述したように、腋窩神経も通過していることにより腋窩神経由来の神経学的な問題が生じる場合もあります。
では、このようにQuadrilateral space syndromeに陥ると血管や神経に問題が起こることが画像上でも確認することができたところで実際の症状について解説を行います。
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QLSの障害による症状について
基本的な症状の内容
①腕を動かすことのできないほどの疼痛(特に肩関節運動時や肩関節の外旋運動時)
②腋窩神経支配の筋萎縮。(三角筋、小円筋、上腕二頭筋長頭)
③①の症状に伴う他動時の防御性収縮
④②に伴う筋力低下とそれらによる特に、肩甲骨のアライメント不良。
⑤異常感覚(痺れや脱力感、倦怠感)
これらの5つが特徴として現れます。
また、慢性的に進行するとこれらの症状から手先の痺れ、倦怠感、脱力感または、③の症状でも説明したように、防御性収縮からくる頸部周囲や頭部の頭痛なども筋肉の連結から考えられます。
では、ここまででQLSの構成とQLSSを発症した場合の、症状について理解することができたと思います。
ここからは、根本的に治療を行う方法について解説を行なって行きます。
QLSSになった場合の対処方法について
基本的には重度であれば、疼痛が強く睡眠障害や肩関節を動かすことができす生活に支障がでるまたは、重度化の進行などが懸念されるためまず疼痛を和らげる必要があります。
そのため病院へ受診して神経ブロックまたは、疼痛鎮痛剤による疼痛緩和を行います。
上記までには至らないがなんとなく、前述したような症状に似ている場合はQLSを構成している筋肉に対して柔軟性を引き出すようなストレッチを行うことで疼痛や症状全体の緩和などが可能になることがあります。
そのため、これから紹介するストレッチが行えるほど肩関節の運動を行うことができるようであれば、ストレッチを行なって行きましょう。
ストレッチの注意点ですが、リズムに合わせて反動を付けながらストレッチを行うと筋肉は引き伸ばされたため縮もうという反射が働き、ストレッチとは逆効果になります。
そのため、反動をつけるのではなく呼吸を意識して行いながらリラックスしての持続的にイラストで示すような姿勢をとり、各筋肉を伸ばして行きましょう。
①上腕三等筋のストレッチ
②小円筋のストレッチ
③大円筋のストレッチ
④広背筋のストレッチ
まとめ
今回は肩関節の疼痛病変でもあるQLSSについての解説をQLSの概要と合わせて、QLSが狭窄することによって生じるQLSSについての症状とその対処方法について解説を行いました。
脳卒中などの肩関節においても、肩関節後方の筋短縮が起こることが、obligate translationなどの現象からも推察されQLSSと同様の症状を発症することも臨床の経験からしても少なくない。
上記のようなストレッチは脳卒中などの場合難しいが、これらの筋肉に対して徒手的な介入での改善を行うと劇的に疼痛などの症状については改善することも少なくないため、必要であればこれらの方法についても取り入れていいと思われます。
本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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