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はじめに
今回はSIAS(Stroke Impairment Assessment Set)という脳卒中の機能障害について統合的に検査を紹介します。
ここからの流れとしては、はじめにで脳卒中とSIASの開発機序について説明を行い、その後、評価方法について説明を行います。
是非SIASの利点について理解し今後の臨床にBRSやFMAといった検査とは異なる部分を理解してSIASの検査を用いて頂ければ幸いです。
では早速SIASと脳卒中の開発機序について説明を行なって行きます。
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SIASの開発機序
SIASはBuffaloで開催されたシンポジウムの勧告にもとづき作成されたとされておりその後にChinoらにより予備的発表を行いこれらは現代において、脳卒中の症状について検査を行う上で当然のように用いられている検査です。
また、道免らは麻痺側運動機能、筋緊張、深部腱反射、患側機能に対して、園田らは体幹、高次脳機能、感覚項目のSIASの有用性と妥当性について研究を行い、脳卒中の症状を捉える上で非常に有用な検査であるとしておられます。
では、SIASの開発はBRSやFMAがある中でなぜこの検査ができたと違和感を感じる方もおられると思います。
これには、脳卒中とはこの記事を読んでおられる方はご承知であると思われますが、受傷すると身体機能障害の他に高次脳機能障害が出現し、日常生活において問題が出現することが知られています。
BRSやFMAでは機能障害においても特にBRSは麻痺の回復段階、FMAは高次脳機能障害(視野や言語、体幹など)を含まない構成となっており、ある意味麻痺の回復段階や上肢、下肢機能障害に対して特化した検査となっています。
そこでSIASは、麻痺はもちろん、感覚や疼痛、体幹筋力や座位バランス、視空間認知や言語そして健側機能についての評価項目を携えており総合的に脳卒中による機能障害を検査することができるように構成されているのが特徴です。
また、園田らによって以前は入院時のFIMの点数による予後予測検討を行なっていたが、これにSIASを加えて予測を行うとさらに精度が高く正確に予測できることを報告しています。そして、道免らは歩行速度はSIAS項目の寄与率56.3%、移乗、移動は寄与率62.5%と歩行速度や、移乗、移動に対して影響を与える因子として分析されています。
これらの観点からSIASは脳卒中の症状を捉えさらに、FIMとSIASを組み合わせて予後予測を行うことができる検査であり非常に有用であることが理解できます。
そのため、必要に応じてSIASを用いた評価をしていく必要があります。
では、この検査一体どうやって行うの?となると思いますので、SIASの実施方法についてこれから解説を進めます。
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SIASの検査方法について
表にて示しているように、SIASは運動機能、筋緊張、感覚、関節可動域、疼痛、体幹、視空間認知、言語、健側機能の大項目の検査を行います。
点数についても同様の表で示すように、各項目3点から5点を満点として合計76点満点で検査できます。
SIASを実施する姿勢について
基本的に何の項目においても座位で実施することが原則とされています。
背もたれがないと座っていられない状況の場合は、車椅子や椅子を用いて検査を行うことが妥当です。
ここからは実際のSIASの評価内容について一通り紹介をして行きます。
SIASの評価内容
(運動機能)
♦上肢近位(knee-mouth test)
座位において患肢の手部を対側膝(大腿)上により挙上し、手部を口まで運ぶ。この際、肩は90°まで外転させる。そして、膝上に戻す。これを3回繰り返す。肩、肘関節に拘縮が存在する場合は可動域内の運動をもって課題可能と判断します。
0:全く動かない
1:肩のわずかな動きがあるが手部が乳頭に届かない
2:肩肘の共同運動があるが手部が口に届かない
3:課題可能。中等度あるいは著名なぎこちなさがある
4:課題可能。軽度のぎこちなさがある
5:健側と変わらず、正常
♦上肢遠位(finger―function test)
手指の分離運動を、母指〜小指の順番に屈曲。小指〜母指の順番に伸展をさせていく。
0:全く動かない
1:1A)わずかな動きがある。または集団屈曲可能。
1B)集団伸展が可能。
1C)分離運動が一部可能。
2:全指の分離運動可能となるも、屈曲伸展が不十分である
3:課題可能。(全指の分離運動が十分な屈曲、伸展を伴って可能)。中等度あるいは著名なぎこちなさあり。
4:課題可能。軽度のぎこちなさあり。
5:健側と変わらず、正常。
♦下肢近位(股関節)(hip-flexion test)
座位にて股関節を90°より最大屈曲させる。3回行う。必要であれば座位保持のために介助をしても問題ない。
0:全く動かない
1:大腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない。
2:股関節の屈曲運動あり。足部は床より離れるが十分ではない。
3:課題可能。中等度あるいは著名なぎこちなさがある
4:課題可能。軽度のぎこちなさがある
5:健側と変わらず、正常
♦下肢近位(膝関節)(knee-extension test)
座位にて膝関節を90°屈曲位から十分伸展(-10°程度まで)させる。3回行う。必要ならば座位保持のための解除をして構わない。
0:全く動かない
1:下腿にわずかな動きがあるが足部は床から離れない
2:膝関節の伸展運動あり。足部は床より離れるが十分ではない。
3:課題可能。中等度あるいは著名なぎこちなさがある
4:課題可能。軽度のぎこちなさがある
5:健側と変わらず、正常
♦下肢遠位(foot-pat test)
座位または臥位、座位は介助しても可能。踵部を床につけたまま、足部の背屈運動を強調しながら背屈、底屈を3回繰り返す。その後なるべく早く背屈を繰り返す。
0:全く背屈しない
1:わずかな背屈運動があるが前足部は床から離れない。
2:背屈運動あり、足部は床より離れるが十分ではない。
3:課題可能。中等度あるいは著名なぎこちなさがある
4:課題可能。軽度のぎこちなさがある
5:健側と変わらず、正常
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(筋緊張)
♦上肢筋緊張 U/E muscle tone
肘関節を他動的に伸展屈曲し、筋緊張の状態を評価する。
0:上肢の筋緊張が著名に更新している
1:1A上肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している。
1B他動的筋緊張の低下
2:上肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している。
3:正常。健側と対称的。
♦下肢筋緊張 U/E muscle tone
膝関節の他動的伸展屈曲により評価する。
0:下肢の筋緊張が著名に更新している
1:1A下肢の筋緊張が中等度(はっきりと)亢進している。
1B他動的筋緊張の低下
2:下肢の筋緊張が軽度(わずかに)亢進している。
3:正常。健側と対称的。
♦上肢腱反射 U/E DTR (biceps or triceps)
0:bicepsあるいはtriceps反射が著明に亢進している。
1:1A)bicepsあるいはtriceps反射がほぼ消失している。
1B)bicepsあるいはtriceps反射がほぼ消失している。
2:bicepsあるいはtriceps反射が軽度(わずかに)亢進している。
3:bicepsあるいはtriceps反射とも正常。健側と対称的。
♦下肢腱反射 L/E DTR(PTR or ATR)
0:PTRあるいはATR反射が著明に亢進している。
1:1A)PTRあるいはATRが中等度(はっきり)亢進している。unsustained clonus
を認める
1B)bicepsあるいはtriceps反射がほぼ消失している。
2:PTRあるいはATR反射が軽度(わずかに)亢進している。
3:PTRあるいはATR反射とも正常。健側と対称的。
(感 覚)
♦10)上肢触覚 U/E light touch(手掌)
0:強い皮膚刺激もわからない
1:重度あるいは中等度低下
2:軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚がある
3:正常
♦11)下肢触覚 L/E light touch(足底)
0:強い皮膚刺激もわからない
1:重度あるいは中等度低下
2:軽度低下、あるいは主観的低下、または異常感覚がある
3:正常
♦12)上肢位置覚 U/E position(母指 or 示指)
指を他動的に運動させる。
0:他動運動の動きもわからない
1:全可動域の運動なら方向がわかる
2:ROMの1割以上の動きなら方向がわかる
3:ROMの1割未満の動きでも方向がわかる
♦13)下肢位置覚 L/E position(母趾)
趾を他動的に運動させる。
0:他動運動の動きもわからない
1:全可動域の運動なら方向がわかる
2:ROMの5割以上の動きなら方向がわかる
3:ROMの5割未満の動きでも報告がわかる
(可動域)
♦14)上肢関節可動域 U/E ROM
他動的肩関節外転を行う。
0:60°以下
1:90°以下
2:150°以下
3:150°以上
♦15)下肢関節可動域 L/E ROM
膝伸展位にて他動的足関節背屈を行う
0:―10°以下
1:0°以下
2:10°以下
3:10°以上
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(疼 痛)
♦16)疼 痛 pain
原疾患に由来する疼痛の評価を行う。既往としての整形外科的(腰痛など)、内科的(胆石など)疼痛は含めない。また過度でない拘縮伸展時のみの疼痛も含めない。
0:睡眠を妨げるほどの著しい疼痛
1:中等度の疼痛
2:過料を要しない程度の軽度の疼痛
3:疼痛の問題がない
(体 幹)
♦17)垂直性 Verticality test
0:座位が取れない
1:静的座位にて側方性の姿勢異常があり、指摘・指示似ても修正されず、介助を要する。
2:静的座位にて側方性の姿勢異常(傾き15°以上)があるが、指示にてほぼ垂直位に修正、維持可能である。
3:静的座位は正常
♦18)腹 筋 Abdominal test
車椅子または、椅子に座り、臀部を前にずらし、体幹を45°後方へ傾け、背もたれによりかかる。大腿を垂直位まで起き上がらせる。検査者が抵抗を加える場合には、胸骨上部を押さえること。
0:垂直位まで起き上がれない
1:抵抗を加えなければ起き上がれる
2:軽度の抵抗に抗して起き上がれる
3:強い抵抗に抗して起き上がれる
(視空間認知)
♦19)視空間認知 Visuo-spatial deficit
50㎝のテープを眼前約50㎝に提示し、中央を健側指で示して頂く。2回行い、中央よりのずれの大きい値を採用する。
0:15㎝以上
1:5㎝以上
2:3㎝以上
3:3㎝未満
(言 語)
♦20)言 語 Speech
失語症に関して評価します。構音障害はこの項目に含めません。
0:全失語症、全くコミュニケーションが取れない
1:1A重度感覚性失語症(重度混合性失語症も含む)
1B重度運動性失語症
2:軽度失語症
3:失語症なし
(健側機能)
♦21)健側握力 Grip strength
健側の具体的kg数を記載する。
0:握力0kg
1:握力10kg以下
2:握力10〜25kg
3:握力25kg以上
♦22)健側大腿四頭筋力 Quadriceps MMT
座位における健側(対側)膝伸展筋力を評価する。
0:重力に抗しない
1:中等度の筋力低下
2:わずかな筋力低下
3:正常
まとめ
ここまではSIASにおける評価内容について解説を進めました。
この内容のように様々な視点で脳卒中の機能障害について捉えることのできる評価方法についてななかなか存在しません。
また、特徴的な部分でもある麻痺のない健側機能を考慮して脳卒中後の身体機能障害を捉える評価について他に類を見ません。
包括的にどの部分の問題が大きくまた、残存機能を捉える上でも非常に有効であると思われます。
今回はSIASの評価内容についてPDFを作成しました。必要であれば、下記よりご利用下さい。尚、採点等の責任は評価者に委ねますので採点や採点表の用いる場合は全て自己責任で使用して頂くことを了承してもし、必要であればご利用下さい。
今回もここまで読んで頂きありがとうございました。
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下部SIAS評価用紙等は自己責任であれば無料で使用して頂いて問題ありません。
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