はじめに
このテーマは、理解している方が多いと思いますが、改めて運動学習などの量的介入を行う際は注意して欲しいのと、復習も込めて今回はエングラム細胞の機能についてを含めて解説を行わせて頂きます。
人はそれぞれ異なる理由としては生まれながらにした癖があり歩き方や喋り方、書体などあらゆる場面で人とは異なるように形成されています。
では、トレーニングやリハビリテーションの場面ではどうでしょう?
そんな観点から悪い癖をつけてしまうと、なぜ本来求めている動作を行うことができないのかを解説をして行きます。
この悪い癖について知る前に、一つ知っておかなければならない言葉があります。
それはエングラムです。
まず、このエングラムについて簡単に解説を行います。
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エングラム(engram)とは
辞書で調べると潜在記憶や記憶痕跡とでてきます。
このエングラムは、ドイツの動物学者でもあるRichard Wolfgang Semon によって提唱された獲得した性格の継承について発展的に取り組まれた結果出てきた言葉です。
このエングラムについてのシステムを図で説明します。上段に通常、学習、通常、想起と時期的層別化を行っています。中間にある○印は脳内に存在することが確認されているエングラム細胞を表しています。一番下段にシュチュエーションの設定を行い巻いた。今回は犬が予防接種を受けるシュチュエーションに設定しております。
一番左の通常の状態では、まだ注射を受けたことがなく注射という存在を知らない状態です。
そして、次の学習の層に移行し初めて動物病院に行くことになると「ここはどこ?何をするの?という不安が強まり、さらに「痛い!!!」思いをします。この時○印で示したエングラム細胞は神経線維をつたり細胞と細胞を繋げます。そして、ここは不安にさせ、痛めるところだと学習が促進されます。
注射が終わり時間の経過と共に通常に再度移行すると、このエングラム細胞は通常の生活では前の使わない状態となります。
それから、ある一定の期間が過ぎ再度受診すると想起され次は「ここは痛いことをされる場所だった」と想起されその際には、学習されたエングラムが機能し細胞を繋ぎ同様の神経機能を発揮し恐怖を思い出します。これが想起の段階に至ります。
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このように、エングラムとは記憶を痕跡と貯蓄して行く細胞と細胞をつなぐ機能のことを示しています。
このエングラムは利根川 進 先生の研究においても実物の確認をされています。
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この細胞については不快的な刺激や快適な刺激との結びつけが強そうなことが想像してもわかりますよね?
では、今回のテーマでもある癖についてですが、癖は自分について楽なことを肥やしにしている動作であり、この細胞が働きやすいことは理解できますよね。
そのため、トレーニングを行う上で悪い癖があるのに対して、知識がないからや分からないから、症例や利用者が希望するからなど変な言い訳をして動作の練習を行うとどうなるか想像できますか?
そうです。
どんどん悪い癖が強まり、気づいた時には手遅れになってしまうのです。
癖を治す過程で現れること
エングラムで説明したように学習し新たな神経経路が形成され習得してしまうと、その動作は長期貯蔵され自動的にその動作や感情を引き出すような経路となっていきます。
このように癖の修正には本当に難渋する結果となります。
では、近年よくある「ブレーキの踏み間違え」を例に解説をします。
ブレーキの踏み間違えなどについては、「乗り換え時が多いのでは?」「高齢者に多いのでは?」「バックをしている時に多いのでは?」などあらゆる事故要因を個々で決めている方も折れますが、この調査「アクセルとブレーキペダルの踏み間違い事故の特徴と対策 平川」によるとそれは全て異なる結果となっています。
乗り換え時に多いのでは?については、ブレーキ等の操作ではないですが事故全体を見ても非高齢者、高齢者共に10年以上運転している状態で発生することが多いです。
また、ペダルの踏み間違えによる事故の場面としては直進で起こることが多いのが現状です。
このような要因として当事者に何が起きているかを調査した結果、慌ててやパニックと言った普段と異なる場面に遭遇することで発生します。
このように普段と異なること(癖と異なること)が起こると人は、癖として自動化されている動作においてもパフォーマンスが低下したような動作となるのです。
このように普段行なっている動作や環境に、精神的な負荷(車が来るから急がなくては、駐車スペースに空きがないから急がなくてはなど)等が加わることで、自動化されている動作でも動作がぎこちなくなり普段と異なった動作を行い失敗してしまうのです。
これらの「車の運転に関する事象」を、
体に置き換えて考えてみましょう。
肩関節の屈曲動作を上肢stageⅣの状態で座位で練習を行います。しかし、連合反応が非麻痺側の過剰努力によって出現しています。
症例様に確認すると「寝てやるより、座位の方が腰痛くならないしこの姿勢でやりたい」と希望がありました。
このような状況で継続して上肢に対する練習を進めた結果どうなるか?
連合反応や過剰努力ありきでの練習を行うとエングラムが形成され、肩関節の屈曲運動を行う時はここに力を入れればいいと屈曲運動を行う際に連合反応や過剰努力ありきでの肩関節の屈曲運動の獲得に至ってしまうのです。
また、それを治す際には運転で説明したように普段と異なる体の使い方をすることで失敗に繋がってるしまう可能性もあります。
その結果、信用の低下や二次的障害や患者様は失敗することに対する恐怖などいいことは何もなく、本来獲得したかった動作の獲得ができなくなってしまうのです。
そのため、あらかじめそのような状態となる前から修正をかけて練習を行うことが本来であれば最善の判断と思われます。
しかし、どうしてもできずこのような状態に陥ってしまった場合について、運動学習の中でも代表的な運動練習の量的観点から、再建を考えてほしいと思われます。
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癖を修正できなかった場合に考えること
ここからは、自分が癖を修正できず連合反応や非麻痺側の過剰努力ありきでの動作を進めてしまった場合の対処方法について解説をします。
運動学習の量について考えるとまだ修正可能な余地があります。
運動学習における量的研究ではKottkeらが代表的な研究を行なっています。
この研究では12種目の活動について充分に習熟するためには何回くらいの反復練習が必要であるかを計算して紹介しており、その中では「バスケットボールを運動選手ができるようになるには何回バスケットを行う必要があるか」などあらゆる動作についての量的な研究が行われています。
その中で充分な習熟には回数としては数十万〜数百万と論じておられます。
それだけの回数をすることでエングラムは充分に習熟します。ですので前述した運転動作においても車の同録年月日(乗りたて)ではなく、10年以上乗っている車でエングラムは習熟し神経回路を形成します。
このことを考えると前述のように、運動学習が進んでしまった場合においても失敗させない方法を模索し、再建していくことができる兆しがあります。そのため、方法は検討し再建を試みていく必要があります。
また、再建を行う際の注意点としては現象の説明「連合反応が出るから・・・など」ではなく症例の「腰痛がでるから」という訴えに対して目を向けた介入を行うことが大切です。でないと患者様は「失敗した」と不安や意欲低下を招く可能性があるので本当に最新の注意をして行うようにして下さい。
今回の例であげた症例様のような場合は、「メンタルプラクティスを組み合わせる」「フィードバック方法を変更する」「腰痛のケアを組み合わせる」など練習方法そのものを変える方法や治せる腰痛であれば治すようにしていくことが必要です。
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まとめ
癖についてはエングラムという記憶機能との関連があります。そして、その神経回路としてエングラムというものが存在します。充分と言える習熟には数十万から数百万回の練習が必要です。そして、一度癖づけてしまうとその修正段階において失敗する危険性があります。もし、癖づいてしまった場合は、症例に合わせて様々な視点から再建方法の立案を行う必要性があります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。