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今回は、肩関節の外転運動について筋活動を中心に複数の文献の紹介を含めて紹介をさせて頂きます。なお、肩関節の屈曲角度0〜45°と肩関節屈曲45〜90°について数本の文献を参考に肩関節の筋活動について紹介をさせて頂きました。
それらに続いて、肩関節の外転運動について筋電図による分析が行われている文献等を紹介して、より効果的な治療の一助となるように知識の整理と合わせて肩関節の筋活動について深めて頂ければ幸いです。
今回の記事の中心は肩関節外転運動の角度phaseとして分別し、肩関節外転0〜60°でのphaseを設定し、それらについてを主として文献から筋活動について報告をして行きます。
なお、外転角度を今回はAbduction Initial phase ZS(Zero-sixty)と分類にし略名をAZSと定義します。
では、早速筋電図の文献について紹介をしていきます。
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1)肩甲上腕リズムの臨床応用を考える
図の説明として、上から僧帽筋上部、僧帽筋中部、僧帽筋下部、前鋸筋中部、前鋸筋下部に分けられています。
この分析においては、健常男性8名を対象として肩関節の外転運動を座位にて行いそれらに伴う筋活動について分析を行っています。
図からもわかるように、屈曲とは異なり、僧帽筋の筋活動を特に中部線維を主として認めるような筋活動を示します。この筋活動は座位で示す結果であり、角度の増加に伴い全僧帽筋の筋線維が漸増していくようになります。
しかし、これは側臥位で実施すると一見外転運動に対して抗重力位となり筋活動はさらに漸増するのではないかと考えがちですが、実は異なる結果になるのです。
この上記の図で示すように屈曲運動のように角度に伴い漸増するのではなく、筋肉の収縮程度に対して側臥位では依存しており外転運動においても0〜60°では主は僧帽筋の中部線維の筋活動を認めるが、それ以降の角度に至っては漸減していくような筋活動の結果を示します。また、この紹介している筋電図はあくまで波形でありさらに、詳細な結果について知りたい場合については、今回紹介している「肩甲上腕リズムの臨床応用を考える」に側臥位による筋電図積分値相対値について報告されているため、より詳細に知りたい場合については参考にされたい。
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2)拘縮肩へのアプローチに対する理論的背景
この研究では、座位での健常者における筋電図波形として外転角度に合わせて示した図となります。今回紹介している0〜60°までにおいては三角筋の中部線維は主動作筋としての筋活動を認めるものの、その他の三角筋前後部線維を主として棘上筋はわずかながらに、肩関節の安定に対して寄与するような筋活動を示しています。
3)肩関節挙上運動の筋電図学的検索
この研究では、18から21才までの健常人10名を対象とし、肩関節の外転運動時に重錘を持ちながら行う動作と、重錘を持っていない状態で行う動作の筋活動について僧帽筋下部線維、棘上筋、三角筋前部、中部、後部、大胸筋鎖骨枝、広背筋、大円筋、菱形筋の9個の筋を対象として分析を行なっています。
図で示すように広背筋と三角筋後部以外は0〜60°にかけて全て筋活動を認める結果となっています。
さらに、細分化し0〜30°外転までに筋活動を認めるものとして棘上筋と僧帽筋下部、大胸筋が筋活動を行い、30〜60°で三角筋前部、中部線維そして大円筋、大菱形筋が筋活動を行うようになります。
これらに関しては、0〜30°では主動作筋として棘上筋が筋活動を行い、そして僧帽筋下部と大胸筋の両者で肩甲骨の安定をテコのように行い担っていることが考えられる。そのため、外転運動と言われ三角筋の中部線維と思いつきやすいがこれらの3つの筋肉が初期微動時に肩甲上腕関節での関節運動に合わせて、肩甲骨を安定させるような機能を担わない限りはシュラグサインなどの、肩甲帯が不均衡であるような代償動作を認めるような結果となことも考えられます。
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4)上肢挙上に伴う体幹機能
外転運動時の体幹運動と筋活動について分析をこの研究で実施されている。方法は座位での肩関節外転運動に対して上肢挙上側と非上肢挙上側とでの体幹の筋活動について分析している。対象の筋は、非挙上側、挙上側ともに、内腹斜筋、外腹斜筋、内外腹斜筋の重層部位、多裂筋、最長筋、腸肋筋で分析を行なっている。結果としてこの中でも上肢挙上側の体幹の筋活動は外腹斜筋が筋活動を認め、非挙上側の筋活動としては、内外腹斜筋の重層部位と腸肋筋の筋活動を認めるようになっています。
5)Electromyographic analysis: shoulder muscle activity revisited
この報告では健常者11名エオ対象として、肩関節の運動について14種の筋肉について角度に合わせた肩関節の運動について筋電図による分析を行っている。その中でも、今回のテーマである外転運動について図を参考に特徴について解説をします。
対象の筋肉は、三角筋前部(aDE)、三角筋中部(mDE)、三角筋後部(pDE)、大胸筋(PMaj)、前鋸筋(SA)、僧帽筋上部(uTRA)、僧帽筋中部(mTRA)、僧帽筋下部(lTRA)、上腕二頭筋(BB)、上腕三頭筋(TB)、肩甲下筋(SSC)、棘上筋(SSP)、棘下筋(ISP)、小円筋(TM)となっています。
図の解説は、左が肩関節外転、右が肩関節屈曲の筋電図結果を示しています。
肩関節屈曲運動と肩関節外転運動の比較においては、肩甲下筋、三角筋中部、大胸筋、僧帽筋中部が外転運動では屈曲運動より優位に働いています。また、これらの筋肉は特に今回の記事にもさせて頂いている通り肩関節外転の初期から屈曲運動とは異なる筋活動を認めています。
また、以外な点は棘上筋(SSP)です。教科書などでは、棘上筋は外転運動と印象が強いものの、この研究においては屈曲運動では初期から筋活動をしているのに対して外転運動では、外転70°以降で筋活動を著名に認める状態となっています。
6)Quantifying ‘normal’ shoulder muscle activity during abduction
図引用:Quantifying ‘normal’ shoulder muscle activity during abduction
この報告をしたJamesはオーストラリアの大学で研究をされている方で、2010年に肩関節の外転運動についての分析を各筋に分けて、筋活動について健常者で分析したものです。
なお、対象は健常者24名で実施し肩関節の外転運動については今回より筋の活動が顕著に認めるようにや、ADL上で肩関節の外転運動を行う上で物を把持していることも多いため、軽いダンベルを持って上記の図で示すように外転角度別に筋活動をEMGを使用して分析した結果となります。対象の筋肉としては、図の下から順番にsupraspinatus棘上筋、middle trapezius僧帽筋中部、middle deltoid三角筋中部、serratus anterior前鋸筋、upper trapezius僧帽筋上部、rhomboid菱形筋、anterior deltoid三角筋前部、posterior deltoid三角筋後部、lower trapezius僧帽筋下部、lower subscapularis肩甲下筋下部線維、infraspinatus棘下筋、latissimus dorsi広背筋、upper subscapularis肩甲下筋上部線維、pectoralis minor小胸筋、pectoralis majors大胸筋の15の筋での分析となっています。この図からもわかるように肩関節の外転初期では棘上筋、僧帽筋中部、三角筋中部が優位に働く形となります。そして、小胸筋と棘下筋の筋活動のピークはより最大外転に近づいた状態で発揮される形となっています。
この文献ではその他にも角度に合わせた詳細な筋活動などについても報告されており、ぜひ読んで頂いても肩関節の外転運動に関する筋活動について知りたい場合は価値のある構成となっています。
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♦まとめ
今回は肩関節の外転における筋肉の活動について参考文献を利用して、現在言われている内容について記載をしました。
今回参考にさせて頂いた論文等に機会があればリンクをそれぞれ貼り付けてあるので是非参考にして頂きたいです。
また、運動学の教科書でせっかく覚えた筋肉の作用についてですがさらに、臨床でどう生かすかまた、どう寄与しているのかなどの参考になり、臨床推論などの一助となるような知識となるので今回の記事を参考にまた、臨床で待たれている患者さまに対して最適なサービス提供を進めて頂きたいと思います。