肩関節屈曲角度における筋活動的分類(筋電図による屈曲0〜45°)

肩関節屈曲角度における筋活動的分類(屈曲0〜45°)

本日もホームページに訪問して頂きありがとうございます。

 

今回は肩関節における治療としてよく問題となる、肩関節の屈曲運動に関しての記事を投稿させて頂きます。

 

 この記事を記載した理由 

よく脳卒中の患者さまを担当しているような医療現場の臨床であることですが、

と聞かれることがあります。

結論から話しますと・・・

知識があればそのようには感じません。

は歩くという活動の考えに足を動かす量や、トレーニングなどとして直結しやすいだけです。

は一つの活動でけではなく様々な活動に対して種々異なる方法で関与しており、その一つ一つの動作が複雑であることよりセラピストの力量によって動作能力へ寄与させることが難しいだけです。

また、理学療法業界では歩行の分析を

♦『筋活動や関節運動などについての基礎的分析』

♦『どの筋肉を使えば早く歩けるか』

♦『どのように歩行動作を行えば早く歩けることができるか』

などという様々な視点から調べ上げられており、問題となる機能低下を発見しやすくまた、それらが治療方法においても効率良く立案していくことができるようになっています。

しかし、上肢を使用する更衣やトイレ動作などの

♦『肩関節の運動』

♦『上肢の筋活動』

などを複合的に考えた論文等は見当たりません。

(T . T)

 

そこで・・・

肩関節の屈曲角度における筋活動を数本の文献からの情報提供を行う。

内容は・・・

『この角度であればこの筋肉が活動している』

『姿勢に伴う筋活動』

などについて整理

これらの情報から・・・

上肢の機能低下に対して

ラピスト」

者様」

家族様」

効率的に治療提供や評価を行うことがしやすくなるように情報整理をします。

 

まずは・・・

肩関節屈曲0〜45°の筋活動について解説を行ないます。

\(^o^)/

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 はじめに 

肩関節に関与する筋としては、肩甲挙筋、僧帽筋、大小菱形筋、小円筋、大円筋、棘上筋、棘下筋、三角筋(前部、中部、後部)、広背筋を主として分析を今回は行います。そして、今回分析する0〜45°の屈曲範囲をSetting phaseなどの例もあるが角度等については明確に定義されていないためFlexion Initial Phase ZF(zero-forty)として定義し分析を行います。

 なぜ角度0〜45°屈曲としたか 

この理由については、医歯薬出版株式会社のカパンジー機能解剖学(Ⅰ:上肢)原著第6版にのP74〜75に記載視されている通り、摂食動作との関与が強く、今回のテーマでもある機能解剖とADLについてを理解して頂くためにこの角度に設定をしました。文献数については、有力な内容について随時増加させてより有効な情報を提供します。また、必要に応じて関節運動についても解説をして行きます。

では、さっそく肩関節の筋活動についての文献紹介を含め、分析結果を報告して行きます。

肩関節屈曲0〜45°ではどの筋肉が関与するの?

肩関節屈曲0〜45°ではどの筋肉が活動するの?

セラピストでは肩関節の屈曲運動については、三角筋前部線維が関与や影響しているなどの会話は良くされます。しかし、肩甲上腕関節は文字の通り「肩甲骨」と「上腕骨」の動きによって構成されています。そのため、前述したように三角筋前部線維だけでの運動では肩甲骨の運動を引き出すことができず、特に随意性の低下などの麻痺の症状がある場合は誤用などを認め、疼痛を著名に認めるような状態となってしまいます。

ではここからは、肩関節の屈曲0〜45°における筋活動について文献を交えて解説をして行きます。

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1)菅原黎明 M・Dによる1974年の肩関節の運動に伴う筋活動分析

引用文献(Electromyographic Study on Shoulder Movements)においては、立位における肩関節の屈曲運動時の筋活動分析において棘上筋(supraspinatus)、棘下筋(Infraspinatus)、小円筋(teres minor)、大円筋(teres major)、三角筋の前部(Deltoideus pars c`avicularis)、中部(Deltoideus pars acromialis)、後部(Deltoideus pars spinata)線維での分析を行なっている。

この報告における今回設定している肩関節屈曲の初動には棘上筋、棘下筋、三角筋前部線維の関与が強いことが筋電図における筋活動分析で認める。

と報告されています。

肩関節屈曲 筋活動

図引用:Electromyographic Study on Shoulder Movements

2)肩関節屈曲保持における三角筋筋活動-屈曲角度と各筋線維との関係-布谷ら

引用文献(肩関節屈曲保持における三角筋筋活動 -屈曲角度と各筋線維との関係- 布谷ら)においては三角筋に注目した肩関節屈曲運動については、布谷らが報告している内容が参考になります。この文献は肩関節の屈曲運動について三角筋は主動作筋だけの働きではなく、肩関節屈曲運動について前部線維のみならず、中部線維や後部線維についても保持的な安定機構があるのではないかという仮説から三角筋の活動について座った状態での筋電図による分析を行ったものであり、この下記の図で示すように主動作筋として三角筋前部が機能するとともに周囲の中部、後部線維についても収縮を認めるようになっています。

三角筋 屈曲筋活動

図引用:肩関節屈曲保持における三角筋筋活動 -屈曲角度と各筋線維との関係- 布谷ら

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3)肩関節挙上運動の筋電図学的検索 朝長ら

朝長らによると、肩関節の屈曲運動を18〜21歳までの健常者で10名を対象として左右20肩での筋活動の分析を行った。結果は下記の図で赤丸部分で示しており三角筋前部、僧帽筋下部、菱形筋が屈曲30°付近での筋活動を認める結果となっている。菅原らの結果と異なる部分については棘上筋と棘下筋の筋活動であるが、朝長らの結果からでは30〜60°屈曲の中間部程度で筋活動を認める結果となっている。

肩関節 屈曲筋活動 朝長

図引用:肩関節挙上運動の筋電図学的検索 朝長ら

4)腱板機能の筋電図学的検討

三原らによると屈曲動作においては、棘上筋、三角筋、僧帽筋は筋電図による肩関節屈曲30°で筋活動の確認をすることができています。棘下筋はどの角度においても一定の筋活動を認めるようになっています。そのため、肩関節の屈曲角度30°においては棘上筋、三角筋、僧帽筋の関与があることが考えられます。

腱板機能の筋電図学的検討  三原ら

図引用:腱板機能の筋電図学的検討  三原ら

 

5)Trunk Muscle Activation at the Initiation and Braking of Bilateral Shoulder Flexion Movements of Different Amplitudes

この文献では、M. Eriksson Crommertらによる報告であり、肩関節の屈曲運動を立位の状態で行い、それらに伴う体幹の筋活動について分析した報告が一部含まれています。方法としては、肩関節の屈曲角度とSmall(45°まで)、Medium(90°まで)、Large(180°まで)と分類を行います。対象者は11名で健常者(年齢28±4歳)を対象としています。対象の筋は脊柱起立筋(erector spinae:ES)、腹横筋(transversus abdominis:TrA)、内腹斜筋(obliquus internus:OI)、腹直筋(rectus abdominis:RA)として角度の分類毎による筋電図を用いて記録するようにした。この文献から今回の記事にしている屈曲運動についての筋活動としては、屈曲角度に合わせて初期ではESが先行して筋活動を行い次いで、TrAが活動し始めそして、OIとRAがその後、僅かに筋活動を行うようになります。

この文献からは、上記にも説明した通り屈曲動作に伴う脊柱の運動を重要とされており、それに対して脊柱起立筋の運動が今回比較された筋活動では重要と判断されています。

引用文献:Trunk Muscle Activation at the Initiation and Braking of Bilateral Shoulder Flexion Movements of Different Amplitudes

 

6)肩関節屈曲・外転における肩甲骨周囲筋の筋活動パターン〜鎖骨肩甲上腕リズムに着目して〜

この研究では、京都大学の森原らによる研究であり、対象者を健常者6名で平均年齢30.2歳±4.3に対しての表面筋電図を用いて、肩関節の屈曲0〜150°までの筋活動の分析を行なっています。0〜30°までの屈曲運動では主として三角筋前部線維が筋活動を行うものの、前鋸筋下部繊維と僧帽筋上部線維と前鋸筋下部繊維の筋活動を認めると報告しています。

肩関節屈曲・外転における肩甲骨周囲筋の筋活動パターン 〜鎖骨肩甲上腕リズムに着目して〜

 

図引用:肩関節屈曲・外転における肩甲骨周囲筋の筋活動パターン〜鎖骨肩甲上腕リズムに着目して〜

7)三角筋中部繊維の肩関節屈曲運動への貢献の可能性の検討 

この研究では、対象者を健常人の男性7名に対して三角筋前部線維、三角筋中部線維、大胸筋鎖骨部線維の端座位における肩関節屈曲の筋活動を表面筋電図計を使用して0から15°刻みで記録をしていまます。この分析における結果については、三角筋前部線維は%EMGの平均値は肩関節45°屈曲までは約2.54%の割合で増加したことに対して、45から165°までは約0.87%でより初期の段階での三角筋前部線維の関与が強いことが分析されておりさらに、大胸筋鎖骨部線維も、屈曲30°までに5.15±2.27%まで%EMGにて筋活動を認める結果となりました。これらに対して三角筋中部線維は肩関節屈曲75°より%EMGで5%を超え、屈曲105°で10%を超えるように経過しており、三角筋中部線維は今回のテーマにおける肩関節屈曲0から30°までの運動に関しての関与は浅いと思われる結果となっています。

三角筋中部繊維の肩関節屈曲運動への貢献の可能性の検討

図引用:三角筋中部繊維の肩関節屈曲運動への貢献の可能性の検討 宮本ら

8)肩関節水平屈曲角度変化が大胸筋の 筋電図積分値相対値に及ぼす影響

楠らの報告は肩関節の水平屈曲(水平内転)についての大胸筋の参加を角度と筋電図の関係から分析を行なっており、この研究の中の90°水平屈曲位が肩関節の屈曲に至ると考え今回は引用させていただいています。この研究の中では肩関節水平屈曲90°にて大胸筋鎖骨部の筋活動が水平屈曲0°と比較して有意に筋活動が増加していることを示しています。しかし、大胸筋胸骨部については角度に伴う有意な変化を認めません。この結果として鎖骨に対しての求心力が必要な角度の関係について考察で述べられている。一部の紹介としては、高濱らが肩関節60.9°水平屈曲肢位から角度が増加するにつれて大胸筋鎖骨部線維については筋活動が増加することを報告しており、この結果としてまず肩関節水平屈曲60.9°以上増加することにより、上腕骨を鎖骨方向へ求心する作用を大胸筋鎖骨部線維が補っているのではという解釈からこのように大胸筋が筋活動を起こしていると分析しています。このことから、肩関節の屈曲運動においても大胸筋鎖骨部の筋活動が増加していく可能性があることを考慮した解釈が必要であると考えられる。

引用文献:肩関節水平屈曲角度変化が大胸筋の 筋電図積分値相対値に及ぼす影響

9)一側肩関節屈曲位保持課題における肩関節屈曲 角度変化が両側最長筋、多裂筋、腸肋筋の 筋電図積分値に及ぼす影響について

この研究においては、肩関節の屈曲角度(30、60、90、120、150)を()内のように層別を行い体幹の筋肉である多裂筋、最長筋、腸肋筋の筋活動とスティックピクチャーによる上肢と脊柱の可動についての分析を関連付けて結果の分析を行われている。この報告によると、肩関節屈曲30°までにおいて先に述べた三種類の筋の中で下垂位と比較して最も筋活動をする筋肉は最長筋であり次いで、多裂筋そして腸肋筋の順番で筋活動の増加を認めています。また、興味深い点としてはスティックピクチャーによる脊柱の可動についてです。体幹が最も後方へ可動する角度は0〜90°肩関節屈曲において増加し、それ以降については前方へ変異して行きます。このことと関連づけて筋活動についての裏付けを行い分析されています。これらから、肩関節の屈曲30°までの可動として最長筋の関与についても視野に入れた介入が必要であることが考えられます。

一側肩関節屈曲位保持課題における肩関節屈曲 角度変化が両側最長筋、多裂筋、腸肋筋の 筋電図積分値に及ぼす影響について

引用文献:一側肩関節屈曲位保持課題における肩関節屈曲 角度変化が両側最長筋、多裂筋、腸肋筋の 筋電図積分値に及ぼす影響について

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 まとめ 

今回は肩関節の屈曲0〜45°までの運動についての筋活動について、肩関節周囲の筋肉と体幹の筋肉についての活動を文献を引用しつつ大事な筋活動について紹介をさせて頂きました。

まず、肩関節においては三角筋はもちろん、僧帽筋、棘上筋の関与を認めます。また、体幹については脊柱起立筋群でもある最長筋においては非常に重要な役割を体幹の筋肉の中でも確認することができます。そのため、肩関節の屈曲0〜45°を必要とするような「はじめに」でも記載した食事動作等のADLにおいては、これらに対して焦点をあて介入をしていく重要性があります。

これらから、今回紹介した筋肉に対して屈曲動作を患者さまに獲得してい頂くにはこれらに対しての評価を行い、介入を進める必要があります。

 

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