肩関節において見落としがちな関節 胸鎖関節と肩鎖関節について

肩関節において見落としがちな関節 胸鎖関節と肩鎖関節について

はじめにはじめに

本日は鎖骨と肩甲骨の連結に必要な靭帯について、それぞれの靭帯の部位とその役割、それらが機能不全に陥る場合に起こる疾患等について解説を行います。

肩関節靭帯、鳥口鎖骨靭帯、菱形靭帯、円錐靭帯

この図で示すように、肩周囲には数種類の靭帯が存在します。この理由は、他の関節と異なり運動方向の種類(屈曲、伸展、外転、内転、内旋、外旋、水平内転、水平外転)を持ち合わせまた、その運動角度も非常に大きく構成されていることから、絶対的な固定性が必要となるためです。

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肩関節は肩甲骨と鎖骨、上腕骨で構成されていることはご存知だと思います。

ここでお気づき頂きたいのが鎖骨のみ体幹と繋がる役割を果たしてることです。

鎖骨は胸部分で胸鎖関節という関節を構成し、肩部分で鎖骨と肩甲骨の肩鎖関節を構成しています。

 

肩鎖関節と胸鎖関節

ここからは今回紹介する鳥口鎖骨靭帯の話題にふれる前に、ここで重要となる肩鎖関節について簡単に解説を行います。

 

肩鎖関節について肩鎖関節について

肩鎖関節は、前述した通り肩関節を構成する関節の一つでもありながら、体幹と肩甲骨を連結し体幹に腕を繋げる役割を果たしています。

関節面の形状は平坦で骨形態の適合性は悪く、関節面には適合性を高めるために関節円板が骨の間に存在し関節包とも連結しています。

信原らはこの関節を固定することで肩甲骨と鎖骨の協調的な運動を生み出すことができず最大挙上を行うことができず、肩の機能の大半は失われてしまうだろうとも言われており肩関節の運動に対しての関与が目立たない関節であるにも関わらず重要な役割を果たしています。

また、この関節においては外からの強烈な外力(交通事故や転落など)を受けることによって、鎖骨の骨折やこの関節に関わる靭帯(肩鎖靭帯、鳥口鎖骨靭帯)が断裂することがあります。

骨折や断裂をすると、肩鎖関節は強靭に靭帯で固定されているため上方へ引き上がるように脱臼を起こします。さらに、信原の報告でもあったように脱臼をすると肩関節の運動を阻害するような障害を認めます。

さらに、脱臼を起こすことで、Rockwoodらが報告しているように鎖骨は後方の肩甲骨方向へと腕の運動によって偏移し、鎖骨と肩甲骨が衝突をして肩甲帯の運動を妨げるようになってしまい、肩関節の運動阻害となってしまうことも多々あります。

ここまでは簡単に肩鎖関節の役割とその役割が破綻する(骨折や脱臼)について解説をしました。

ここからは、肩鎖関節と連携して上肢を体に結びつけいてる胸鎖関節について、肩鎖関節と胸鎖関節の関係について解説をします。

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肩鎖関節と胸鎖関節の関係について肩鎖関節と胸鎖関節の関係について

胸鎖関節とは肋骨の胸部分に存在する胸骨と言われる骨と鎖骨で構成さている関節です。

肩鎖関節と胸鎖関節

引用HP:http://takaakinakano.com/wp-content/uploads/2017/05/a46b490d8562ae8c30df3428336b4b59.jpeg

この胸鎖関節は挙上、下制、前方牽引又は前突、後退、後方回旋、前方回旋の関節運動を可能としており胸鎖関節が関節運動をすると肩鎖関節とこれらの運動方向へ動き、逆に肩鎖関節が関節運動をすると胸鎖関節がこられの動きを行う可動性をもっています。胸鎖関節の可動範囲としては、上肢の最大挙上動作で鎖骨は約45°挙上し、加えて40〜50°後方へ回旋すると言われています。また、水平内転では鎖骨は15から最大30°後退して動きます。そして、肩甲骨を下制させると鎖骨は10°下制します。これらのように上肢の運動に伴い肩鎖、胸鎖関節は協調的に連動し運動を遂行し、体幹と連結しています。

鎖骨の運動方向

ここまでで、肩鎖関節の構成と役割、肩鎖関節と胸鎖関節の関係とこれらが上肢の運動に関連していることについて概ね理解できたのではないかと思います。

ここからは、今回の主たるテーマでもある鎖骨が体幹と肩関節と連結しているのに重要な鳥口鎖骨靭帯について解説をしていきます。

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鳥口鎖骨靭帯について鳥口鎖骨靭帯について

この鳥口鎖骨靭帯は2種類に分類されており、菱形靭帯と円錐靭帯に別れています。この二つを総称して鳥口鎖骨靭帯としています。

肩関節靭帯、鳥口鎖骨靭帯、菱形靭帯、円錐靭帯

この2種類の靭帯が鎖骨と肩甲骨の連結を生み出しており、肩鎖関節のみの連結だけではなく、鳥口鎖骨靭帯(円錐靭帯と僧帽靭帯)より強固に肩甲骨と連結して肩甲骨と鎖骨が連動しつつも協調的に安定した動きができるようになっており、上肢帯の運動を遂行可能なものとしています。

ではそれぞの靭帯についての働きや伸張される可動方向についてここから解説をしていきます。

 

肩関節の運動と胸鎖関節、肩鎖関節の視点から円錐靭帯について考える。

肩関節の運動と胸鎖関節、肩鎖関節の視点から円錐靭帯について考える。

前述したように、上腕骨が肩甲上腕関節で屈曲運動を開始すると肩甲帯は上方回旋、胸鎖関節は挙上し可動を開始します。そして、肩甲帯の上方回旋最大可動域60°、胸鎖関節最大40°程度までこれら2つの関節が肩甲上腕関節の可動に合わせて動き、最終域に近づくにつれて肩鎖関節で鎖骨の後方回旋が生じて肩関節屈曲180°までの可動域を担保するようになっています。この後方回旋動作で鳥口鎖骨靭帯の一つでもある円錐靭帯は伸張されるように機能し、肩甲帯(特に鳥口突起)と鎖骨との引きつけを行いながら、連動し協調的な運動とともに固定を行なっています。この円錐靭帯の損傷などを伴う場合は後方回旋が起こりにくくなり肩甲骨と鎖骨の協調性の破綻などを起こし特に、前述したように上肢挙上動作の最終域で関与する事が多いため上肢の挙上動作における最終域での硬さや痛み、可動域制限を引き起こす可能性があります。

 

肩関節の運動と胸鎖関節、肩鎖関節の視点から菱形靭帯について考える。

前述したように、鳥口鎖骨靭帯は円錐靭帯と今回この項目で説明する、菱形靭帯によって構成されています。

では、菱形靭帯とはどのような運動に伴い機能を持っているのかについてここからは解説をして行きます。

先に説明した円錐靭帯は上肢の挙上動作に対しての肩甲帯と鎖骨の協調的な運動を可能にしています。逆に菱形靭帯は、この図からもわかるように肩甲骨の鳥口突起の前部分に付着しており肩甲骨が下方回旋や下制、内転運動を行うような肩甲上腕関節の運動に伴い菱形靭帯は伸張されながら肩甲骨と鎖骨の協調性を引き出しながら安定した関節運動に対して寄与していると考えられています。このことについては、保坂らも新鮮肩鎖関節脱臼に対する鳥口鎖骨靭帯一次的修復術の論文において考察で報告しています。

参考文献とHP

1:新鮮肩鎖関節脱臼に対する鳥口鎖骨靭帯一次修復術:保坂ら

2:肩の機能チェックの考え方:太田

3:スポーツ・カイロプラクティス 胸鎖関節のバイオメカニクス

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鳥口鎖骨靭帯が肩関節の運動に影響しているか鑑別するためのまとめ

鳥口鎖骨靭帯が肩関節の運動に影響しているか鑑別するためのまとめ

肩甲上腕関節における肩関節の運動において、肩甲骨と鎖骨は連動して協調的に運動機能を果たしています。

胸鎖関節と肩鎖関節により体幹と肩甲骨を連結し、体幹の運動に合わせて上肢が可動するようになっています。

肩鎖関節付近では肩鎖関節靭帯のみの肩甲帯との連結ではなく、鳥口鎖骨靭帯が鎖骨と肩甲骨にある鳥口突起と強固に連結しています。

鳥口鎖骨靭帯は、2種類あり円錐靭帯と菱形靭帯に分けられています。

円錐靭帯は、肩関節の屈曲や外転運動の最終可動域に大きく関与しています。

菱形靭帯は、肩関節の伸展や水平外転運動の最終可動域付近で大きく関与しています。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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病院に勤めていた作業療法士が、実際の臨床現場で学んだ脳出血や脳梗塞などに伴う後遺症さらに、骨折や脊髄損傷などの後遺症などの情報を提供。また、基本的な医学用語やトレーニング方法などについての知識をわかりやすく解説。

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