はじめに
理学療法については主に歩行についてのトレーニングを行うことが多い。作業療法については上肢機能と日常生活についてのトレーニングを行うことが多い。しかし、近年作業療法は日常生活への介入としてシフトしていき、上肢機能については必要性を吟味し介入することが多く臨現場では廃用手の量産をしてしまっている。これについては、理学療法業界では筋活動や関節運動について3次元動作解析装置を利用して分析を行うことが多い。しかし、上肢機能については作業療法でそれらの分析を行うことは理学療法業界と比較して少ないのが現状である。
未来は、ロボットなどの介入や毒素を使用した介入が進むようになっているがこのままでは理学療法では下肢についての介入ができるのに対して、上肢の介入は下肢と比較して同等に介入することが困難でありまた、作業療法業界では作業などの日常生活への介入へシフトしていくことによって上肢機能への介入知識を持った人の偏りが今後出てくる可能性もあり、上肢機能については今後の未来の動向を考えると未開拓な部分も下肢と比較して多くあり介入を進める必要がある。
今回はこれらの未来を危惧してシリーズ化しながらまずは肩甲上腕関節部分に存在する臼蓋上腕靭帯についてと様々な文献を参考に整理をしてきます。
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臼蓋上腕関節について
肩甲上腕関節はまたの名として「第1肩関節」とも言われている。これを構成する骨は、肩甲骨と上腕骨で構成されています。この関節は関節包を言われる膜で薄い膜で覆われておりまた、その一番深部で強固な靭帯(上中下の臼蓋上腕靭帯)によって肩甲骨への上腕骨を引きつけらるよう働きをしています。
臼蓋上腕靭帯の位置関係
この靭帯の特徴は、上中の靭帯は帯状に開きながら下方の関節包へと伸びている。上中が下方に伸びることによって上中と下の臼蓋上腕靭帯の間に隙間が存在する。この隙間をWeitbrecht孔といいます。この孔が存在することで肩甲上腕関節は脱臼することも多い関節であります。
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臼蓋上腕靭帯の役割
この靭帯の機能は、肩甲上腕関節の安定性の保持と運動の静的拘束を行っている。また、この靭帯が機能することで肩甲上腕関節における外転と外旋動作で上腕骨頭は後方に移動し、骨頭は前方の関節唇と接することなくこれらの動作を可能としている。また、この靭帯は他の肩関節に存在する靭帯とは異なり、一番深部に存在するため他の肩甲上腕靭帯などと混合する解釈をしてしまいがちであるが、それらの靭帯は関節包の外側に存在するため別で考える必要がある。
臼蓋上腕靭帯の上中下線維のそれぞれの機能と役割について
上部臼蓋上腕靭帯(superior glenohumeral lig)について
上部臼蓋上腕靭帯(superior glenohumeral lig)は肩関節内転運動での下方転移を制限している。この靭帯は上腕の下垂位で安定性に対して貢献しています。そのため、この靭帯が損傷を受けると上肢挙上開始時から不安定性を呈することが特徴的であり、上腕骨頭の可動に合わせて肩甲胸郭関節が可動し始める際に上腕骨頭を臼蓋へ引きつけることができず、下方転移を引き越しそのほかの組織のアライメントが崩れ疼痛を誘発するまたは、肩甲骨での後方突出を行うような動作を行い、肩甲上腕関節を引き締めるような動作を行い、筋線維での引きつけや安定への代償動作を行うことが特徴的に出現します。この鑑別について最も妥当な検査方法がです。詳細の方法については参考URLでの説明を参考にして下さい。この上部臼蓋上腕靭帯が損傷することではProtzmanが報告したように前方亜脱臼またはRocking shoulderに似たような症状が出現します。
Darwabarn’s test 参考URL:https://balance-conditioning.net/dawbarns_test/
中部臼蓋上腕靭帯(middle glenohumeral lig)について
中部臼蓋上腕靭帯(middle glenohumeral lig)は上肢の下垂位を保持、外転60〜90°で緊張しブレーキの役割を果たす。この靭帯についても上部臼蓋上腕靭帯で説明したことと同様の症状が出現する場合があり、その有無については疼痛の部位によって鑑別すると共に上記で記載させて頂いた外転60〜90°で靭帯を緊張するように動かすことで負荷を加えた場合に疼痛が出現するようになります。また、反復性肩関節脱臼において、関節包自体の弛緩が問題とされているケースがありそれは前述したように関節包へ靭帯が付着していることからであり、それらによる肩甲下包の伸展に注目し、肩関節の内部構造として特に前方ポーチanterior pouchの弛緩として臼蓋に付着する靭帯群の破損で骨頭が前方へ突出して、臼蓋前下縁の損傷を引き起こし、この現象について特に中部臼蓋上腕靭帯を原因とされている。信原らもこの現象については80.6%でこの中部臼蓋上腕靭帯に原因があることを確認しています。
下部臼蓋上腕靭帯(Inferior glenohumeral lig)について
下部臼蓋上腕靭帯は外転で緊張して外転運動時の外転運動時の不安定さを制限し、後方関節包下部と協同して肩甲上腕関節の特に上腕骨の骨頭を支えるハンモック様の役割をきたし安定性を担保している。この下部臼蓋上腕関節においては、肩甲骨面での外転60°においての外旋運動時に最もかかる張力が大きいとの知見を得ている。さらに、この下部臼蓋上腕関節はSuperior band、anterior axillary pouch、posterior axillary bandの3つに分けられています。また、中部臼蓋上腕靭帯(middle glenohumeral lig)でも解説した反復性肩関節脱臼においてTurekらはこの靭帯が関与してることも指摘している。いずれにせよ、中部か下部かの原因を区別する際はそれぞれの靭帯が緊張するポジションで患者の症状について耳を傾ける必要があり、中部は外転60〜90°で最も緊張し、下部は肩甲骨面外転60°で最も緊張するとされており側方か肩甲骨面でどのように訴えるかを聴取し区別することが望ましいと思われます。
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参考文献
1)肩 その機能と臨床 第3版 信原克哉
2)Protzman RR:Arthrodesis instability of the shoulder.JBJS 62-A(6):909-918,1980
3)Perthes G:Uber Operationen bei habitueller Schulterluxation.Dt Z Chir 85:199-227.1906
4)Bankart ASB:Recurrent or habitual dislocation of the shoulder joint.Br Med J Surg 2 :1132-1133.1923
5)Turek SL:Orthopaedica.J B Lippincort.Philadelphia.1959