脳卒中後の閉じこもり類型
脳卒中後に後遺症に伴い閉じこもりとなることは少なくないです。
閉じこもりは2種類存在します。
1:歩行などの移動機能が高いにも関わらず閉じこもりとなってしまう。
2:歩行などの移動機能が低下しており、閉じこもりになってしまう。
この2種類が主に、脳卒中後の閉じこもりとして定義されている場合が多いです。
1の閉じこもりについては、精神機能的な問題や、社会的な問題が寄与しているケースによる閉じこもりが多いとされています。
2の閉じこもりについては、身体機能的な問題が寄与していることが多いケースの閉じこもりであるとされています。
今回は、死因に直結する疾患と後遺症を患いやすい疾患についての解説から始め、脳卒中後の閉じこもりによる悪影響とそれらの研究などをを含め、どの点において治療を行っていくかを1の閉じこもりについてを中心に解説をしていきます。
死因については平成29年に厚生労働省から発表されている内容によると、1位が悪性新生物、2位が心疾患、3位が脳血管疾患、4位が老衰、5位が肺炎となっています。一時期肺炎が死因の第3位まで上昇を認めたものの、現在は5位に変化し、3位は脳血管疾患となっています。
平成28年の厚生労働省の調査において、介護保険で介護を受けいている疾患別の数値が発表されています。
図引用:平成29年度 高齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況
この表を参考にその他、不明・不祥などの疾患が不明な状態を除外すると、全体の数値では1位が認知症、2位が脳血管疾患、3位が老衰、4位が骨折・転倒、5位が関節疾患でとなっています。
これらから死因別疾患と後遺症別疾患では直接リンクすることはなく、死因のリスクでも3位、介護等が必要になる疾患でも2位となる脳血管疾患は死亡の危険性もあれば、救命されても後遺症を患う可能性が高く非常に注意すべき疾患であることがわかります。
また、脳血管疾患についてはこの後遺症がとても厄介であり、就労していた人が就労することができなくなる可能性や、趣味を楽しんでいた人が趣味ができなくなる可能性も非常に高く、日常生活もままならぬ状態に至る後遺症を引き起こす危険性があります。
これらの後遺症に伴う生活上の不便さを伴う脳血管疾患ではこれらの生活に対しての発症前の生活に対しての非効率さから閉じこもりや自殺に至るような事案も多い疾患でもあります。
ここからは、脳血管疾患による閉じこもりの悪影響についての解説を進めていきます。
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閉じこもることによる悪影響については、閉じこもることによって活動範囲が狭小化し身体活動量が低下し要介護状態に繋がることが危惧されています。また、一定期間閉じこもることによって社会の流れに適応することを再学習することは非常に労力を必要として、失敗や負担などから再度閉じこもりになってしまうことも少なくないです。また、要介護状態となることで、人の手を借りて生活をしていくことからの罪悪感や責任感から脳血管疾患を発症した患者様の精神機能までもおかして、人生までも左右してしまいます。
参考文献
1:地域高齢者におけるタイプ別閉じこもりの予後
2:寝たきり老人の成因─「閉じこもり症候群」について.老人保健の基本と展開
3:Fear of falling and activity avoidance in a national sample of older adults in the United States.
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文化の違いや社会的制度の違いがあるため、今回閉じこもりについては邦文の研究から要因について記載をします。
尚、ここでの閉じこもりの定義として閉じこもりは、10m以上歩行が可能であるにも関わらず、通院や通所以外で外出をしていない者として、非閉じこもりは週に1回以上通院や通所への外出をしている者として説明をします。
在宅における脳卒中患者の閉じこもりに関連する要因解析(大山ら2008年)の研究では、退院後6ヶ月経過した65歳以上の10m以上の歩行が杖または装具を使用して可能であり、認知機能面のスクリーニング検査であるMMSEが24点以上、HDS―Rが20点以上の脳卒中後患者27名(男性:16名 女性:11名)を対象として、非閉じこもり群と閉じこもり群に分けて、性別、年齢、疾患(脳卒中の形態)、麻痺側、BMI、Brunnstrom Recovery Stage、10m歩行時間、Barthel Index、老研式活動能力(手段的自立、知的能動性、社会的役割)、屋内転倒自己効力感、屋外転倒自己効力感、主観的健康感、家庭内での役割の有無、地域での役割の有無、親しい友人および親戚の有無の項目を群間で比較し、より強い要因を分析した研究がある。これによると、屋外転倒自己効力感と親しい友人および親戚の有無が強い要因として分析されています。
参考文献:在宅における脳卒中患者の閉じこもりに関連する要因解析
これらから閉じこもりについては転倒恐怖心についての介入は、トレーニングを行う場合については十分考慮(その患者の自宅周囲の環境や趣味で出かける場所などについて)して介入を進める必要があることが考えられます。単に、バランス練習などを行ったとしても、臨床でもよく経験をしますが、そのバランス練習が身体機能ではなく、患者様のどの日常生活に必要となるのかや、趣味的活動に必要になるのかを十分検討した上で介入を進める必要があり、Lomg-term effect of three multicomponent exercise intervention on physical performance and fall-related psychological outcomes in community-dwelling older adults: a randomized controlled trialのいう2012年の論文でも紹介されているように、単にバランス練習を行いバランス機能が向上しても、転倒に関する恐怖感については改善を認めなかったと報告されています。
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どうしても、閉じこもりとなる場合については何か外でできることをこちらが提示し選択して頂くようになりがちであり、強制的に屋外での活動をセラピスト側や支援者側が見つけ出すようになっていると思われます。まずは、その患者様が屋外で活動することを拒んでしまうのかを、種々異なる視点(装具があると障害があるように見られる、歩行速度が遅いと・・・、歩容が汚いと・・・、引っかかるのが怖いなどなど)患者様と共有しそれが改善できる方法をさらに患者様と共有して目標の設定を行い、決して支援者主体やセラピスト主体での活動範囲の拡大を試みるのではなく、患者様主体での活動範囲の拡大を行う必要があると考えられます。
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