乗り物酔い 脳卒中との関係について

 

乗り物酔い 脳卒中との関係について

今回は脳卒中と乗り物酔いについて、Twitterで問い合わせがあったので脳科学的な部分を含めて記載をしてきます。

 

はじめに

ここで言われる乗り物酔いについての定義は、乗り物に乗った際に起こる不快な症状についてを乗り物酔いとします。

別名では「動揺病」や「加速病」とも呼ばれています。

基本的には日常とは異なる振動刺激に伴いこれらは、発症すると言われています。

ここで重要になってくるのが、これらの振動や回転運動に伴い身体では姿勢を保つための平衡感覚機能が大きな役割を果たしています。

この平衡感覚は主に、耳の奥に存在する受容器と視覚と体の各関節動きによる統合から、どんな傾きに対しても不快な症状なく対応できるように人間の体は構成されています。

これらの機能がそれぞれ適応することによって乗り物の発進や停止、カーブなどの動きから酔いを抑制するとされています。

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乗り物酔いの発生機序

「はじめに」で記載したようにそれぞれの感覚機能がうまく働かないような機能不全や疾患または、乗り物とは異なる部分にそれらの器官を利用する(携帯を見ることや、イヤホンで音楽を聴く、横になって寝る、座席を反転させて後ろを見た状態で後部座席に同乗し会話するなどなど)ような動作を行うことによって、自分が思う感覚と異なる刺激が脳内に伝達されることで、脳内での統合をすることができず、主に、自律神経が脳の異常な感覚を受け取り、内臓や心臓、血管などの循環器のコントロールを不良にした結果、平衡感覚に必要な機能が働きにくくなり、乗り物酔いを引き起こしてします。この自律神経がうまく機能担い結果として、体内の水分調節等が狂い、冷や汗や胸やけや吐き気、めまいや頭痛などを引き起こすような症状の出現に至ると推測されています。

ここまでは一般的に乗り物酔いについて簡単に解説をしました。

ここまでの解説でわかるように、乗り物酔いと脳の神経学的な働きには因果関係があることがこれまでの情報からも推測することができます。

では、今回問い合わせのあった乗り物酔いと小脳との関係について、前述した内容を含めて次項でその原因について解説をします。

参考文献:乗り物酔いの予防 笠井

 

小脳と乗り物酔いの関係

小脳と乗り物酔いについては、いくつかの報告もあり、小脳と乗り物酔いについては関係があることが基本的には考えられています。

1長谷川高敏:加速度病一乗り物の酔い.永井書庖,大阪, 1977.

2松永喬:動揺病について.耳鼻咽喉科 Q&A. 六法出版社, p 426-429, 1980.

3松永喬:動揺病.図説臨床耳鼻喉科講座 2. メジカノレビュー社, p 144← 145, 1984.

4花田 力:動揺病の実態に関する研究.日耳鼻.69950-978, 1966.

5松永亨,武田憲昭動揺病と宇宙酔い.耳鼻臨床81 : 1095-1120, 1988.

6Benson, A. J. : Motion sickness(Dix,M.R. and Hood, ].D., eds.). John Wiley and SonsLtd, New Y ork, p 391-426, 1984

は、一体なんで小脳が関わるの?っと言う疑問についてですが、ここからは神経経路を整理しつつ理解して下さい。

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内耳神経と延髄の前庭核経路

一気に説明されると連結させて考えることが難しいため、分けて考えていきます。

まずは、内耳神経と延髄の前庭核経路の感覚系についての解説です。

平衡感覚とは回転運動や加速運動と言われるものでありそれらは、耳の中に存在する三半規管が回転運動、耳石器が傾きや直線運動の加速を認識する受容器(感じ取るば場所)です。

それらが感じとった感覚は脳への伝達されるのですが、ここで活躍する神経とは内耳神経と言われる神経であってこれは耳の奥の神経の部分で2本に分岐します。1本は音を伝える神経でもある蝸牛神経です。もう一方が今回のテーマでも大切な前庭神経と言われるものです。

内耳神経と経路 延髄 前庭核

図引用:Science, Natural Phenomena & Medicine

この神経は、前庭神経は分岐し、脳まで辿り脳内の延髄といわれる場所の前庭核に達します。その前庭核の内側核、外側核、上核、下核にそれぞれ前庭神経が分岐しながら接続し、脳への感覚入力を行います。これらで得た情報については後に脳の視床に対しても、情報の伝達を行います。

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延髄の前庭核と小脳との関わり

前述したように、加速運動や回転運動が脳の延髄にある前庭核まで伝達されることは理解できたと思います。

では、延髄まで情報が行き渡っただけなのに、小脳が関係してくるのかについてここから延髄と小脳との関係を踏まえて解説します。

先に述べた、脳までの経路については主に感覚の経路を示すものであり、小脳が関与する場合は運動経路の問題が主となります。

先に説明した通り、内耳神経で受け取った回転運動や加速運動について前庭神経核に伝達されます。そこで図で示すようにその感覚は前庭神経核だけで処理されると、興奮性の刺激のみが入力されるため、過剰な刺激を受け取るようになり、今回記事にしているような乗り物酔いのような症状を招いてしまいます。

前庭神経核と小脳の関わり

図引用:小脳 大脳基底核一部改変

そこで、重要なのが下オリーブ核を経由して伝達された視覚情報です。

視覚情報は、視神経を経由して下オリーブ核へ伝達され登上線維はその情報を小脳へとの連絡します。そして、視覚から得た感覚を元にプルキンエ細胞に対して感覚入力されその後、抑制系として前庭神経核へ働きかけ、内耳神経で得た回転や加速に対して、抑制系の働きかけを行い回転運動や加速運動に対しての眼球運動と頸部運動の協調性を生み出し乗り物酔いのような症状を引き起こさない働きかけを担っています。また、これらの感覚は脳の感覚統合でとても重要な視床に対しても伝達されます。

 

また、小脳では先に説明した抑制系の働きに合わせて、GABAというγ-アミノ酪酸が神経終末部分に多く存在して抑制系の神経の働きを担っています。もし、小脳が脳卒中や脳腫瘍などによって侵されてしまった場合は、視覚や回転、加速などの感覚を病前と同様に受け取っていたとしても、これらの機能不全から受け取った感覚に対しての抑制機能が正常に働かず、一見協調的に動き問題がないと感じていても脳内では異常をきたしており、乗り物酔いといった症状が出現していしまう可能性が高くなることが考えられます。

小脳抑制 GABA

図引用:小脳 大脳基底核一部改変

こんな症状に対しての対応

僕自身がこれらの知識から、普段患者様にアドバイスする内容と基本的に治療などので評価する方法についてここからは解説をします。

まず、評価としては画像所見、閉眼している際と開眼している際での回転や加速運動に関する感覚に誤差があるか、失調などの症状が手足にあるか、その他の感覚(触覚や温痛覚、関節位置覚、運動覚など)に問題があるかを確認し、症状ができる根本の脳の機能局在を評価していきます。

また、個人差はあるのかもしれませんが、抑制系の機能がうまく働かず乗り物酔いの症状にもよると思いますが、交感神経が優位に働いているような症状(発汗や血管収縮に伴う頭痛、心臓がドキドキする)に伴うめまいや浮遊感であればGABAを経口摂取することもオススメできます。しかし、内服の関係等もあるので一度かかりつけ医に相談してもいいかと思われます。

GABAが市販でもチョコレートなどが代表的に宣伝されています。また、GABAについては眠気などを引きこす可能性もあるので、自ら運転しているときは特に注意が必要であると思われます。

また、経口摂取で体内に対して意味があるの?と思われる方もおられると思うので下記にGABAの経口摂取についての結果論文を添付させて頂きますので、是非参考にしてみて下さい。

GABAの経口摂取結果論文

GABAの経口摂取による自律神経活動の活性化

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治療方法としては、基本的には内服で経過をみることが必要であると思われます。また、トレーニングとしては、乗り物酔いの症状が出現する程度にもよると思いますが、自律神経を整えるように深呼吸などを行いリラックスできる時間や方法を患者様と模索すると同時に、副交感神経の働きを促進させることと、頭部などの回転運動を開眼で行う状態と閉眼で行う運動を行います。しかし、過剰にそれらを行うことで交感神経が優位となる可能性がありますでの、いきなり強く激しく行うのではなく脳にこれが回転しているってことだよ程度の比較的弱い運動から開始することが望ましいと思われます。

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