迷路性(前庭性)運動失調について

以前の記事でも記載したましたが、今回も迷路性(前庭性)運動失調の症状から解説をして行きます。

 

 迷路性運動失調の神経経路 

迷路性は別名前庭性運動失調とも言われます。

これらの前庭性の情報シェマーとしては、基本的に固有の脊髄反射とは経路が異なります。通常の固有脊髄反射は骨格筋からや皮膚から固有感覚を受け取り、脊髄後角を経由し中継して脊髄前角を通り最終的に骨格筋へ運動出力を行い反射を形成しています。しかし、前庭反射は効果器から受け取った感覚を前庭器へ移行し前庭核まで経由したのちに、外眼筋や骨格筋に対して働きかけを行い、運動を形成します。ここで示す効果器は視覚や回転移動を司る三半規管を通して上前庭核へ。そして、耳石器でもある重力慣性及び固有器で受け取った脊髄後角を通して外側前庭核を通して脊髄前角から骨格筋へ。さらに、骨格筋からの入力を再度小脳を通して室頂核へ投射し入力の反転を行って中脳を経由し、視床そして一次運動野へと投射してく経路があります。

 

迷路性運動失調

図参照:平衡制御に占める前庭神経核の役割

前庭核の経路

図参照:金芳堂 カラー図解 神経解剖学講義ノート 正誤表

これらを理解すると、めまいが脳幹部位で起こる原因や、小脳失調とは異なり体幹いわゆる身体の中枢部に現れ、四肢には現れにくいのがご理解できると思います。

また、これまでの説明にもあったように、回転や抗重力などの活動に関与する前庭核は、迷路性運動失調は基本的には、頭や体などの回転するような運動且つ、反射的に行うような動作時に著名に出現することが理解できると思います。

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 どんな時に起こるか 

体位変換(寝返りや起き上がりなど)

歩行中の振り返り

閉眼時など

車が通るのを見ている時など

 

上記のように、効果器を利用した動作(抗重力運動や回転運動、視覚を利用している時など)においては、迷路性(前庭性)の運動失調は現れやすいと思います。

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 迷路性運動失調の代償機構 

基本的にはこれらの症状の代償として視覚を用いて代償していることが、これらの症状を認める患者様は多いです。そのため、閉眼するとより顕著に運動失調が現れ且つ、「どんな時に起こるか」で述べたように体位変換などの無意識で反射的に行った動作で著名に出現します。重度の場合は閉眼していると起き上がれないなどの開眼と閉眼での動作能力のむらが現れます。

しかし、これらと類似した失調が脊髄性失調でありますが、基本的に迷路性(前庭性)運動失調では、閉眼後に急激に揺れが出現するのではなく「徐々に」動揺が大きくなるように出現することが特徴です。徐々に現れる要因としては、他の効果器が代償しているために失調の症状が現れにくいことも考えられます。

これらのシステムについては、前庭は基本的に様々な効果器からの情報を得てそれらを処理するような働きをもつ一部であります。ですので、その効果器の一部でもある視覚などの遮断を行うと外界からの刺激を受けずに慣性を受け取る効果器のみでの運動となり、より著名に症状が出現します。これは重度な患者様の場合であれば日常の生活から障害を受けると思います。また、軽度な症例であっても運転や自動車乗車などを行うと著名に症状が出現する場合がありますので、回復して普段の生活での重力や慣性で問題がない場合でも前述のような、より速度が伴うような運動や活動に関しては注意が必要であると思われます。

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 迷路性の失調に対しての可能性 

迷路性の運動失調の克服にはまず、視界を用いて代償機能を促通していくことが先決であると思われます。いきなり閉眼での動作を行うと直接前庭核へ働き、間違った動作になれるとその間違った動作の克服には回復上不利益になりかねません。そのため、視覚を用いてまずは患者さまは静止した状態で360°を見渡し外界の刺激と、慣性についての統合を進める必要があると思います。そして、ある程度日常生活に慣れてきたら、慣性を生み出しながら閉眼での動作学習を行い、重力運動などの学習を進める必要があると思われます。

 

 

 まとめ 

迷路性の失調については前庭核の関与が強く、別名前庭性運動失調とも言われている。

前庭核は、効果器からの入力を受けて小脳とのやりとりを行いながら出力するものと、そこから視床などの他の脳細胞を通して、一次運動野からの運動遂行をしている。

迷路性運動失調については、四肢には障害が現れないが、閉眼で徐々に体幹の揺れが出現することが特徴。

迷路性運動失調の克服には、いきなり閉眼での動作を行うことで間違った統合方法を学習してしまう可能性がある。

段階づけとして、開眼且つ静止した状態での視覚情報の統合と、効果器の統合を行い360°見渡せる状態になった後に、患者自身が動きながら上記内容と同様の統合を行いつつ、最終的に閉眼での慣性の統合をより意識した介入を行うことで変化する可能性がある。

 

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

次項は脊髄性失調についての解説をしていきたいと思います。

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迷路性運動失調
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病院に勤めていた作業療法士が、実際の臨床現場で学んだ脳出血や脳梗塞などに伴う後遺症さらに、骨折や脊髄損傷などの後遺症などの情報を提供。また、基本的な医学用語やトレーニング方法などについての知識をわかりやすく解説。

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