今回は前回の記事「運動失調の特徴(小脳の機能説明と小脳性失調の症状について)」やそもそも運動失調とは?という方に向けた「素人でもわかる! 失調症の分類について(大脳性、脊髄性、迷路性、末梢神経性について)」の続編として、各種失調の症状についてまとめました。視覚での情報や感覚の詳細な評価がとても重要であり、失調に対しての治療についても考えられるので、ぜひ参考程度に読んで頂きたいと思います。
迷路性運動失調とは
脳の前庭系と言われる部位の障害や病気で発症する失調のことであり、頭の動きや傾き、回転運動などによって生じる運動失調のことを言います。
この失調の特徴として基本的に四肢の運動や体性感覚いわゆる触覚や圧覚、深部感覚には障害がなく一見は正常に見えてしまいがちなことああります。しかし、前述したように頭の動きによって生じるため、体位変換時などに反射的な運動障害が現れます。例えば起き上がる際に手を伸ばすことや、足を動かすことが頭の動きや傾きと協調的ではなく、バランスを取れない患者様は過度に手足に力が入るなどの現象を認めます。また、この失調症を呈する場合は、体の傾きを異常に感じるため視覚での代償を多く行い動作を実施しており、例えば目を閉じた状態と目を開けた状態での起き上がり動作を確認すると目を閉じている際の動作が目を開けて実施している動作よりうまく遂行することができない状態となります。また、脊髄性の運動失調との相違は閉眼後に徐々に動揺が大きくなることとも報告されています。
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脊髄性運動失調とは
この失調においては、脊髄の脊髄小脳路が障害されると発症することが多い病状です。基本的に脊髄小脳路が障害を受けると深部感覚(筋、腱、関節からの感覚)に障害を発症することとなり、手足の位置が他の感覚機能から知らされる情報と深部感覚から知らされる情報とで相違が出現し、現れる失調です。そのため、運動や動作をした時などとそのような類いで絞扼されるのではなく運動時や安静にしている時、両時間ともに出現します。また、基本的には四肢に失調の出現が起こり特に下肢で顕著に症状が現れます。そのため、迷路性失調と同様に視覚での代償を行うことが多いですが、迷路性運動失調との大きな異なる点は閉眼直後から失調の症状が現れます。また、歩行時においては、踵で地面を叩きつけるような動作が現れており、靴底の減り方やなんとなく足が固そうな動作を行いながら歩行していることが多いと思われます。また、書字動作では字の大きさや間隔、場所にややバラつきを認めることが多いです。
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大脳性運動失調
この失調においては、脳の大脳を言われる部分が障害を受ける失調です。しかし、大脳とは大脳以外の(視床や小脳、大脳基底核)と言われる部分との神経局在も種々多数存在しており単一での失調とは現れにくい失調でもあります。仮に症状が現れるとするのであれば、頭頂部や前頭部、一次感覚野など感覚の神経細胞や線維が多く存在する部分で、感覚障害を認めた状態で且つ、運動麻痺がないあるいはごく軽度の状態で揺れを認める場合が多いと思います。また、これらの失調については強力な小脳の学習機能や視床の感覚統合によって顕著にこの症状だけが現れることは少ないと思われます。また、この症状においては脳由来の症状であり小脳性の運動失調との見極めがつきにくい場合もあるため、CTやMRIによって病変の判断や、症状の問題部位の特定を行います。
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その他の失調症状について
この失調においては、末梢神経障害による運動失調のことを示しています。末梢神経に対して障害を得る病気としては、糖尿病やアルコール性、血液循環性の疾患などがあり、それらの疾患があり揺れを認める場合はその障害が大きく関与していることが疑われます。また、この失調の特徴として表在感覚(触覚や痛覚、温覚や冷覚など)の低下または障害があり、運動失調を呈することが多いです。
まとめ
今回は前回の記事に続いて、迷路性失調、脊髄性失調、大脳性失調、その他の疾患に由来する失調についての症状についてまとめました。
視覚での代償や発症機序等の見極めを行い、何がこの失調を患ってしまった患者様にとって最前の治療方法かを考えていくことが先決です。
今回も最後まで、ご覧いただきありがとうございました。
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