概 論
失調症は、脳や脊髄に何かしらの影響を受ける病気や怪我をしたことによって現れ協調的に滑らかな運動や動作を行うことができず、ふらつきや振るえるような症状が現れる症状のことを示しています。
失調症の4つの特徴
1:動作の場面により顕著に出現する
2:四肢と体幹が大きく動く
3:環境や動作場面の変化により失調症状が異なる
4:失調症になっている原因によって症状が様々である
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失調症の5分類
失調症は原因別に下記に分類されています。
1:小脳性
2:迷路性
3:脊髄性
4:大脳性
5:その他(糖尿病性神経障害、アルコール性神経障害、血液循環障害など)
注意!!
これらの分類については感覚検査と失調が出現している部位の観察を行い判断をして行きます。なお、大脳性の失調については小脳性と合わせて、症状が出現するため判断がこれらの検査のみでは難しいため、CTやMRIで病変の特定を行い判別するようにされています。
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失調の分類鑑別方法(図1参照)
手順1:深部感覚障害の有無について判断をする。
深部感覚:ここで示す深部感覚とは位置覚と運動覚を示します。
位置覚:四肢がどの位置にあるかが目を閉じた状態でもはっきりとわかる感覚
テスト方法:上肢の場合、目を閉じて頂き、検査者が患者様の片側上肢をある方向へ動かし、検査者が「同じような形に腕をして下さい」と患者様に伝え、患者様にその腕と同じ形を反対側の腕で作って頂き、左右に違いがあるかどうかを観察します。
運動覚:四肢がどの方向へ曲がったり、伸びたりしているかがわかる感覚
テスト方法:上肢の場合 目を閉じて頂き、検査者が親指を上下に動かすので上に上がっていると感じたら「上」、下に曲がっていると感じたら「下」と患者様に答えて頂き、だたしく関節の動いている方向がわかるかどうかを判断します。
手順2:どの部位に出現しているかを見極める
・Part1 深部感覚に障害があると判断した場合はRomberg徴候の評価を行います。
・Part2 深部感覚に障害がないと判断した場合は体幹失調か四肢失調かの判断を行います。
手順3:感覚検査による、最終失調の原因判断
①手順2のPart1でRomberg徴候も認めている場合は次に温痛覚の障害で有無判定を行い、末梢神経性のものか脊髄後索性のものかを判断します。
温覚:温覚とは文字の通り、温かいことがわかる感覚のことを言います。
テスト方法:温かいもので火傷等に至らないものであれば基本的に利用してテストを行ってもいいとされており、自宅だとお湯をペッドボトルに入れて腕や脚に当てて温かいことがわかるか、わからないかを検査します。
痛覚:痛覚とは文字の通り、先端の尖ったものが皮膚に触れた際に痛みを感じることがわかる感覚のことを言います。
テスト方法:先端の尖ったもので、外傷等に至るような刃物でなければ自宅でも簡単に検査することは可能であり、インクがついても良いのであればボールペンの先端を皮膚に押し当ててみることや爪楊枝を皮膚に押し当てるなどを行い痛みがわかるか、わからないかの検査をします。
なお、深部感覚に障害があり、末梢神経性や脊髄後索性を疑う場合については、神経のそれぞれの部位に沿って評価を進める必要があるため、基本的にはデルマトームに沿ってそれぞれの部位に感覚の検査を行うことが望ましいと思われます。
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②手順2のPart2 で体幹失調が強く現れた場合は迷路性の失調を疑います。四肢失調が強く現れた場合は小脳性の失調を疑います。
体幹失調
体幹が四肢の運動に合わせて協調的に動かすことができない状態のことを言います。
テスト方法:基本的には躯幹障害と言われ代表的な検査方法としてTrunk ataxic testと言われるものがあります。それらを使用して体幹失調についての有無判定を行います。
四肢失調
手や足に失調を患い、思っている位置に手を伸ばそうとすると手が震え出し、目的位置付近まで近づくとさらに震えが強くなる症状です。また、足においては片側の踵で反対側の膝を叩くようにすると、膝からずれて異なる場所を叩くようになるような状態が観察されます。
テスト方法:代表的なものとしては、鼻-指-鼻試験や前腕回内外検査、踵-膝検査などがあります。
図1)失調分類鑑別方法参考図
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まとめ
今回は失調症についての原因別の鑑別について簡単にまとめて見ました。
失調にはそれぞれ、大脳性、末梢神経性、脊髄性、迷路性などが存在し症状についての鑑別方法も今回の記事通り明らかにされている部分は増えてきています。この評価がなぜ大事かは、治療法がそれぞれの原因によって異なるからです。それらを念頭におき、失調症が疑われる場合は、これらの評価を十分に行い治療方法の検討を行うようにして下さい。まあ僕も含めてですが・・・まずは整理して治療方法にアクセントをつけて行こう。