脊髄損傷(簡単な概論と発症年齢、受傷起点、症状の経過と脊髄ショック、完全損傷と不完全(不全)損傷の違いについて)

概論(脊髄損傷とは)

脊椎の内部を通過する脊髄に何かしらの影響をもたらし運動麻痺や感覚障害をきたしたものとされています。

これらは、骨性と非骨性の2種類に分かれて存在します。

骨性とは、事故や転落などによる脊椎の骨折や脊髄の損傷により、脊髄を圧迫や出血、断裂などにより神経症状(運動麻痺や感覚障害など)をきたすものであり、一般的には外傷性脊髄損傷と言われるものです。

非骨性とは、脊柱管内に何かしらの病変(後縦靱帯骨化症:OPLLや脊髄腫瘍、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など)を発症している状態で軽微な外力が加わることで、骨には異常を認めないが神経に異常を認めるようになり、運動麻痺や感覚障害などをきたすようなってしまう脊髄損傷のことです。

非骨性の脊髄損傷はこれらが原因で症状が出現する患者様もおられれば、症状がなかったが非常に非骨性の病変を発症している人で、その部位に対して軽微な外力が加わることで一気に症状が出現することがあります。

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脊髄損傷発症年齢

脊髄損傷は基本的に転落や交通事故やスポーツ外傷が多いです。そのため、若年者(20〜50代)での発症率が高いです。なお、高齢者のケースでは加齢による骨強度の低下や骨粗鬆症の合併による転倒にで発症する危険性は高くなります。そのため、加齢に伴う転倒は単に手足の骨だけではなく、背中の骨についても注意することが必要です。

 

脊髄損傷の症状として

基本的には運動麻痺と感覚障害と膀胱直腸障害が多くの患者様で発症します。また、若年の状態で不慮の事故や転落などで発症することが多く精神面や心理面などに対しても配慮が必要となります。

脊髄損傷を発症した時の脊髄の状態図

脊髄損傷の画像診断

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引用:研修医・救急医のための整形外科・外傷・スポーツ医学マニュアル

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脊髄損傷後の急性期での症状の経過

重度の脊髄損傷では、受傷直後に一時的な脊髄機能不全(脊髄ショック)を呈し、数日から数週間が経過したのちに脊髄ショックから離脱すると明らかな運動麻痺や感覚障害が出現します。そして、その状態から全身状態(血圧や疼痛など)の管理をしつつ離床やリハビリテーションなどが開始され、重度の脊髄ショックを伴っている場合は自律神経等の関与も強いため、血圧や内臓系などの変調が出現しやすいため、関わる場合はそれらに重々配慮を行うことが必要となります。

脊髄ショックとは

一時的に損傷した部位以下の脊髄機能を失う状態に陥ってしまう状態のことを言います。

脊髄ショックの基本的症状は、弛緩性麻痺や各種反射の消失、血圧低下、麻痺性イレウス、膀胱の弛緩・拡張です。

急性期の脊髄ショックを起こしている人や急性期をすぎた患者様に対してもこれらの問題から後遺症の有無などについて確認することは、今後に何にか起きる危険性などについても把握するためにも非常に重要です。脊髄ショックの離脱判断は球海綿体反射または、肛門反射で一般的に確認を行います。

脊髄ショック後の病状変化

脊髄ショックから離脱後は、運動麻痺が弛緩性のダラーんとした感じから、筋肉の抵抗感を感じる痙性麻痺へ移行していきます。さらに、感覚障害については顕著にこの部位などと明確に変化し、痺れなどがわかるようになっていきます。それらに伴い腱反射の異常などが出現します。

また、それらの神経障害部位は基本的にデルマトームやミオトームと言われるものに従い運動麻痺や感覚の検査を行い障害部位について確認をしていきます。

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損傷部位の理解

基本的に急性期病院での主治医によりC5損傷と言われればC6以下の部位に障害が現れるような形になります。

 

完全損傷と不完全損傷の違い

完全損傷(complete)とは

損傷した部位より下位の神経が完全に障害され、運動麻痺と感覚障害を認め、その程度が完全麻痺、完全な感覚の消失をきたしている状態のことを示します。もちろん、膀胱などにも障害が波及しており、膀胱括約筋をうまく使用して排泄や排便の調節をすることができない状態のことを示します。

 

不完全損傷、不全損傷(Incomplete)とは

脊髄を損傷しているものの、部分的に機能は残存しており脊髄の損傷をきたした部位より下の運動は可能であるも部分的に運動麻痺が出現している状態や、感覚障害も運動麻痺同様に損傷部位以下の感覚が残存している部位もあれば、残存していない部位など様々な症状をきたすようになります。排尿、排便についても曖昧さがあるや残尿感を感じるなど多種多様な症状をきたす場合があります。

基本的にはこのようにまとめられています。

完全損傷と不全損傷の判別表

引用URL:https://www.hwc.or.jp/hospital/pdf/sekisonpanf.pdf

まとめ

今回は、簡単に簡単な概論と発症年齢、受傷起点、症状の経過と脊髄ショック、完全損傷と不完全(不全)損傷の違いについてまとめてみました。少しでも知識として役にたてばいいですが、今後は手術方法や神経解剖などについても記載をしていきます。

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病院に勤めていた作業療法士が、実際の臨床現場で学んだ脳出血や脳梗塞などに伴う後遺症さらに、骨折や脊髄損傷などの後遺症などの情報を提供。また、基本的な医学用語やトレーニング方法などについての知識をわかりやすく解説。

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