患者さまやご家族さまにわかりやすく伝える左半側空間無視

最終更新 平成30年11月3日

 左半側空間無視とは 

脳卒中(脳出血、脳梗塞、アテローム血栓、交通外傷など)の受傷により左側の車や人、物などに気づかない現象のことをしめしています。

ただし、これは定義として感覚や運動障害によらないものとされています。

※しかし、臨床場面においてはしばしば感覚機能の障害や身体機能などの運動障害を合併することも多いのが実状です。また、左半側空間無視は、急性期症状として現れることも多いため、感覚や運動障害を認めない現象だけが左半側空間無視と考える必要はないと思われます。

 

では・・・・・一体、脳のどこが病気になれば

そのような症状が現れるのでしょう?

By:zcool.com.cn

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 劣位半球と優位半球について 

脳には優位半球と劣位半球という名称が存在し一般的に左の脳を優位半球右の脳を劣位半球と考えています。

図:http://www.nmt.ne.jp/~shichijo/aphasia.htmlから引用

図で示すようにいろいろな働きを左右の脳によって補っています。

そんな中、左半側空間無視は左片麻痺(左側半身の麻痺)と併発して発症するして現れる症状であり、視空間の注意機能の問題を主としている症状であり図で示す特に空間、全体の部分が担っており右の脳(劣位半球)によって生じるものとされています。

もう少し詳しくは・・・・・次項の劣位半球の視空間注意力分散で説明。

 

 劣位半球の視空間注意力分散 

図引用:高次脳機能障害学.石合純夫.医歯薬出版株式会社.

Aのイラスト解説

脳卒中を起こす前の状態を示すイラストです。まず、脳のイラストに着目して頂くと右には赤三角があり左には白三角があります。そして、脳の前方外側には赤三角が全体に散らばり、白三角が右側のみに描かれています。これらは、脳のイラスト内の三角と前方外側に見える色が連動しており、右脳の赤三角は全体を視野に入れて視空間注意を働かせています。しかし、左脳にある白三角はどうでしょう?右側の赤三角が全体に散っているのに対して右側のみに白三角は散らばっています。=右脳は視空間に対して全体に注意を向けるようにしているのに対して、左脳は視空間に対して主として右側に注意力が限局している。

 

Bのイラスト解説

右脳が脳出血などで障害を受ける(黒くなっている部分)と、本来は右脳で視空間の全体に注意を向けているため右脳が障害を受けると全体を見渡すことができなくなり、左側が注意しずらくなることにより左半側空間無視が起きる。

 

 

 左半側空間無視の病巣 

図:http://blog.livedoor.jp/frrev/archives/17291175.htmlから引用

縁上回、角回、尾状核、楔部、Extra-nuclear、紡錘状回、中・下後頭回、上・中・下側頭回、下頭頂小葉、島、舌状回、海馬傍回、Sub-Gyral、縁上回の16領域とされている。特に上・中側頭回、中後頭回、縁上回は特に著名に症状を認める可能性があると報告されています。

参考文献:左半側空間無視の責任病巣(Easy Z-score Imaging Systemおよびvoxel based Stereotactic Extraction Estimationを用いた99m Tc-ECD SPECT解析による検討)

 

 

 利き手での優位半球と劣位半球の違い 

一般的に右利きであれば右大脳半球を劣位半球、左大脳半球を優位半球となります。

しかし、左利きの場合であれば上記内容が逆転する(優位半球が右半球となり、劣位半球が左半球となる)場合がある。

参考文献:Relationship between language lateralization and handedness in left-hemispheric partial epilepsy.

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左半側空間無視の種類

①外空間に対する左半側無視

・体を中心として左半側無視について

簡単に説明をすると自分の体を中心として、左側を全て見落とすような現象のことを示しています。

例:「本を読んでいる時に左側のページを読まない」「歯ブラシが左側にあると見つけることができない」など。

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・対象物を中心とした左半側無視

自分の体や中心などとは関係なく右側にあるものに対しても、その物の左側を全て見落とす。

例:食事が左右に二つずつ4皿置いてあるとします。しかし、どの皿に対してもまんべんなく手をつけるが一向にそれぞれのお皿の左側の食べ物については手をつけないなど。

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②身体に関わる左半側無視

前述して内容は目で見た物に対しての無視になります。

身体に関わる左半側無視とは、自分の左側の手足などについて認識する力が低下している状況のことを示します。

ここでは、代表的な3例について解説を行います。

・身体無視とは

左半身の麻痺等に関係なく、左側の手足の状況などを気づくことができない現象のことを示します。

例:寝ている最中に左腕を背中に敷いてしまい強い痛みを感じる、髭剃りをしている時に左側だけを忘れる、着替えの際に左腕を袖に通していない状況にもかかわらず着替えが終わりましたなどと告げるような状況のこと

・運動無視とは

麻痺がないか、あってもごく軽度であるにも関わらず、動かせる左手足を動かさない状況や現象のことを示します。

例:歩いている際に左足の振り出しが不十分となる、歩いている際に動くにもかかわらず左腕を振らない、また大きな荷物を運搬する際に両手を利用して運ぶのではなく片方の麻痺のない手のみで運ぼうとするなど

・運動消去現象

左手には明らかな麻痺がない状態で、左手のみや右手のみで可能な作業が、両手を利用して行うように伝えると途端にできなくなる状況のことを示します。

例:片手でも運べるものを左手単一で運ぶこと可能。右手単一で運ぶこと可能。では両手でやっていただくように伝えると運ぶことができなくなる現象のことを示します。

・半側空間無視とADLへの関連

半側空間無視の影響はADLの改善度についても影響を及ぼしていることが「Impact of Spatial Neglect in Stroke Rehabilitation: Evidence from the Setting of an Inpatient Rehabilitation Facility」アメリカのニュージャージー州から報告さており、空間無視があることでADLの改善に対して悪い影響を及ぼすと言われています

半側空間無視に対しての評価方法

代表的なものとしてはBITと言われるもの。BIT自体は外空間の2種類の評価を行うものになります。 参考URL : http://nscpt.net/blog-entry-18.html

その他には TMTなどがその対象になります。参考URL : http://rehab-idea.com/tmt/

身体に関わる無視の症状と病識についてはCBSを利用することが多いです。

 参考URL : http://www.st-medica.com/2014/09/cbs-hansokukukanmusi.html

また、身体に関わるような無視の症状については、患者様に「右手で左の肩を触って下さい」などと教示しその部位を適切に触れることができるかどうかの検査をします。

海外ではKessler Foundation Neglect Assessment Process(KF-NAP という評価方法も2012年に開発されています。

さらに、運動無視の症状についてはペッドボトルの蓋を片方の腕ずつ行って頂く、右手で左袖部分のボタンをかける・左手で右袖部分のボタンをかけるなどの両手を片方ずつ運動し確認をします。

運動消去現象については、両手で膝を同時に軽く一定のリズムで叩く、両手を使用して粘土を左右へ伸ばし確認をします。

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左半側空間無視に対してのリハビリテーション

半側空間無視のリハビリテーションのポイントとしては、ボトムアップアプローチを行うかトップダウンアプローチを行うかが考える必要があるポイントです。

※半側空間無視におけるボトムアップアプローチとは?

温存された感覚・運動の協調を通じて無視空間に働きかけようとする無意識的な訓練

①カロリック刺激

 脳損傷側の耳に冷水を注入することにより無視側の向かう眼振を誘発させて無視の改善を試みる

②視運動性刺激

 動く電車から風景を眺めていると自然に眼振が生じるが,このような視運動性刺激を利用して視線を無視側へ動かし改善を試みる

③頸部筋振動刺激

 左後頭部の筋に振動刺激を与えて運動性錯覚を生じさせ,無視の改善を試みる

④プリズム適応療法

プリズム適応療法とは、メガネの屈折角度を用いて本来注意の向きにくくなっている方向に対して、強制的に注意をレンズを通して向けるようにする方法です。詳細は「Network for Spatial Neglect」を参考にしていたたければイメージは付きやすいかと思います。

⑤The effect of repeated sessions of galvanic vestibular stimulation on target cancellation in visuo-spatial neglect: preliminary evidence from two cases.

Zubko O1, Wilkinson D, Langston D, Sakel M.

この論文は2013年にイギリスから発信されている論文であり、GVS(galvanic vestibular stimulation)と言う機器を使用し脳のバランス機能を司る部位に電流を流すことで半側空間無視が改善する可能性があることを示している論文である。

 

トップダウンアプローチ

無視空間へなんらかの手掛かりを与え意識的に注意を向ける訓練

自発的に左端を確認する

見落としをフィードバックする.ビデオフィードバック.

食事のトレイの左手前,車椅子の左ブレーキ,横書きの文章の左端などに目印を付ける

視覚走査訓練:右から左側へ動く指標を追視しつつ,その指標に合わせて上肢を動かす.

Left arm activation 

メンタルプラクティス 

体幹を左側へ向けるアプローチ

左側からの刺激を遮断

左側への寝返り

などがある。

 

また、これらの治療方法には半側空間無視を発症すると前頭葉の働きが頭頂葉の機能を補おうとし、活発的になり易疲労性となるため段階付けをし、リハビリテーションを選択していく必要があるでしょう。

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