最終更新 平成30年8月23日
肩甲骨について
まず肩甲骨について解説をします。
肩甲骨とは左右の肩に存在する骨であり、腕の骨(上腕骨)と体幹をつなぐ役割を果たしている骨です。
つなぐ役割は肩甲骨と上腕骨につながる筋肉が、になっています。
それらによって、体幹の動きと腕の動きを連動させる要(かなめ)であり非常に重要な骨です。
肩甲骨の動きと筋肉
①挙上:肩甲挙筋、僧帽筋上部線維
②下制:僧帽筋下部線維、小胸筋
③外転:前鋸筋
④内転:大菱形筋、小菱形筋、僧帽筋中部線維
⑤上方回旋:僧帽筋上部線維、僧帽筋中部線維、前鋸筋、僧帽筋下部線維
⑥下方回線:小胸筋、肩甲挙筋、大菱形筋、小菱形筋
これらの肩甲骨動きと腕の動きには密接な関わりがあります。
腕と肩甲骨の動きとして代表的な運動は、「肩甲上腕リズム」と言われるものです。
肩甲上腕リズムとは
肩甲上腕関節で上腕骨が屈曲60°に達した際それ以降の角度において上腕骨が2°屈曲するたびに、肩甲骨が1°ずつ上方回旋という運動を行います。
また、上腕骨が外転30°に達した際それ以降の角度において上腕骨が2°屈曲するたびに、肩甲骨が1°ずつ上方回旋という運動を行います。
しかし、このように体幹と腕をつなげ、腕の自由な動きを産みだす肩甲骨ですが骨折する場合があるんです。
肩甲骨骨折の発生頻度と要因
基本的に肩甲骨は背中の大きな筋肉に囲まれており骨折の発生頻度としては、全骨折の1%程度と言われておりなかなか骨折することはないのですが…
よほど強いが威力の加わる交通事故や転落などによって生じることが多いと考えられます。
肩甲骨骨折:種類の分類
①体部骨折
②頸部骨折
③肩甲棘骨折
④関節窩骨折
⑤肩峰骨折
⑥烏口突起骨折
上記6種類に一般的に分類されます。
種類別発生頻度
1位:体部骨折(全体の約50%)
2位:頸部骨折(全体の約33%)
肩甲骨骨折に伴う神経損傷
肩甲骨の周辺は神経が多く走行しており、腕のあらゆる神経を骨折によって傷つける可能性があるため必ず診察や注意点等について医師や医療スタッフに尋ねるようにしてください。
仮に神経に傷がついている場合は、骨折した側の腕に力が入らなくなる、しびれや何か違和感を感じるなどの症状が腕のどこかに現れます。
主に腕神経叢という腕の神経が密集している神経損傷の起こる骨折としては、頸部・烏口突起骨折で現れます。
さらに、肩甲上神経損傷は体部、頸部、肩甲棘骨折の3種類で症状として腕神経叢で説明したような症状が現れます。
他には、腋窩神経損傷は頸部骨折で現れることがあります。
肩甲骨骨折に対する治療
①保存療法
保存療法の適応は、体部位骨折であり転位が少なく安定した骨折に対して選択されます。
保存療法の種類としては、三角巾・バストバンド・ゼロポジション固定、耐えられない疼痛(自制外)以外での早期運動療法を行います。但し固定することによって二次的合併症を併発する可能性があるので下記の症状には注意が必要となります。
二次的合併症の代表例
1:拘縮、2:変形治癒、3:偽関節、4:礫音、5:滑液包炎
②手術療法
鎖骨骨折や肩鎖関節脱臼により肩甲骨を現在の位置へ吊り上げておくことが困難な場合と、関節窩骨折で行われることがあります。
③運動療法
①の保存療法によりある一定期間保存療法による固定等を行い、その後に痛みの出ない程度の強さから肩関節を各方向へ運動させていきます。また、座っている状態で体を前に倒し重力を利用した肩甲骨の運動も良好と言えるでしょう。
※運動療法際に気をつけるポイント
基本的に疼痛が出ない範囲で愛護的に進める。
理由…骨折により折れた骨の歪みまた、転移している場合がありそれらが筋肉や神経に触れることにより痛みを感じることになるため
始めは自分で動かす場合は問題の無い手と手を組み動かすまた、人に動かして頂くのが良いです。
理由…筋肉を収縮させることにより、折れた骨がさらに歪む、ずれる、転移する可能性があるため過剰な収縮は仮骨(かこつ)が形成され始めた段階で徐々に負荷を高めて実施することが望ましいです。
参考事例URL
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptcse/23/1/23_96/_pdf