記憶機能とは
日常生活で自立して生活するにはとても大切な機能。記憶機能には様々な種類と分類が存在し、それぞれが様々な機能を果たし自立した生活を支援している。
記憶機能のことを考える際は、登録・把持・再生の三つの項目を考えて臨床推論をしていくことが必須となる。
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記憶機能の分類
・時間軸での分類
①記憶の把持時間によるもの
短期記憶(short term memory)、長期記憶(long term memory)と分類されさらに神経心理学的には即時記憶(immediate memory)、近時記憶(recent memory)、遠隔記憶(remote memory)の3種類に分類される。
②発症時点を基準にしたもの
発症以前の記憶を逆行性健忘、発症以後の現在に近い記憶を前向健忘の2つに分類される。
③生活の中での用いられかたによるもの
主に現在進行形の記憶(作業記憶:working memory)、未来・将来で行うであろうとしている予定などに関わる記憶(展望記憶:prospective memory)である。例では「今日は15時から会議」などと未来の予定など保持し続ける記憶のことである。
なお、これらにはあらかじめ意図した行為を適切な状況下で、タイミングよく自発的に思い出すという要素が含まれている。また、上記の例であげた「今日は15時から会議」という記憶では今日15時から会議という存在想起と、何の会議であったか思い出す内容想起という2種類の想起が関与している。
・内容の質による分類
①視覚性記憶
目で見て覚える記憶のことを示す。
②聴覚性記憶
耳で聞いて覚える記憶のことを示す。
③意味記憶
単語や数字、概念など今まで自分が習って学んできた知識的な記憶
④エピソード記憶
「昨日の〇〇を購入した」、「一年前に旅行に出かけた」などの記憶
⑤手続き記憶
繰り返し練習したことによって獲得されている技術や知覚の記憶を示す。簡単に説明すると習慣化されている行動を覚えていることなどである。
例:車の運転方法、調理器具の使い方など
⑥日常記憶
意味記憶、生活記憶:作業記憶・展望記憶、手続き記憶が複雑に絡み合い日常生活を営むなかで使用される記憶のことを示している。
内容の質による分類で紹介した①〜⑥までの記憶は陳述記憶と非陳述記憶の2種類に分けることができる。
陳述記憶はエピソード記憶と意味記憶を指し、非陳記憶は手続き記憶とプライミングを示す。
記憶の検査について
・Digit span(聴覚性記憶検査)
・Tapping span(視覚性記憶検査)
・標準言語性対連合学習検査(S-PA)
・RAVLT(Rey Auditory Verbal Learning Test )(Rey(レイ)15語聴覚性言語学習検査(言語性記憶検査))
・ROCFT(Rey-Osterrieth Complex Figure Test) (レイ複雑図形検査(視覚性記憶検査))
・日本版RMBT 日本版リバーミード行動記憶検査(日常生活に即した記憶検査)
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記憶障害のリハビリテーション
まずはどの種類の記憶機能や高次脳機能が良くて、悪いかを精査していく必要があります。
例えば、昨日話した内容をその出来事以後毎日聞かなくてはいけないような状況でありそれが負担に感じる場合
患者さま自身は毎日話していることに気づいていません。また、それがゆえに聞いている側にも初めて話しているように話します。聞いている側からその話し昨日聞いたよと言っても「話してない」か「そうだったけ」くらいにしか捉えず問題であることには全くと言っていいほど無関心です。
こんな患者様の場合の高次脳機能を整理して関わる必要があります。
・この患者様の場合の良いところ
言語の発話は可能。
エピソード記憶(印象の強い事柄については理解している)
視覚性記憶機能は問題ない
身体機能に麻痺があれば麻痺については理解している=後遺症が存在することにより記憶が悪くなる可能性を理解している
・この患者様の場合の悪いところ
印象の強い記憶については理解しているもその他は曖昧。
聴覚性記憶、手続き記憶、日常記憶(時間別=時系列に物事を並べられていない)については低下していることが伺われる。
高次脳機能についての病識は曖昧
これらを考えて記憶のリハビリテーションの整理
記憶機能障害があるからと言って計算や目で何かを覚えることは特である。そのため、聴覚性記憶から介入していくことが必要。また、日課の管理を行い1日の出来事をメモや日記にしていくことから始める。
そのため、適応のリハビリテーションとして耳で聞きながら計算を行うこと、さらには物語を介助者が読み上げどんな人物が出てきたか、どんな話の流れであったかなどを記憶して頂く。それを聞いいてもらっていた話が終了次第どんな内容であったかを覚えて頂く。いきなり耳だけで聞いてもらいながら記憶して頂くことが難しい場合は、メモをとって頂きながら聞いて頂くことが大切になります。また、日課を管理することでその日の出来事を整理し、明日の予定管理を行うような内容を盛り込んだ日課の管理方法であれば明日の予定などを行うことで今日と明日の予定を自然に論理立てて記憶することができるようになる。
これらにより、症状で説明したような内容を改善させることを期待することができます。
しかし、これにはミスをしないような関わりをしあくまで患者様には支援している姿勢を見せ一緒に頑張る必要があります。失敗していることを促す例えば、「それは昨日も話していたよ」などと患者さまが間違えていることを頻回に促すことによって患者さまは自分が間違っていないものだと思い込んでいるため、何度もその指摘するような行動を続けることによりその後は指摘している側が間違っているように考えるようになり間違えを間違えと捉えなくなります。
上記の内容を踏まえ様々な記憶障害に対して対処していきましょう。