脳卒中や認知症などに伴う脳の異常疾患では注意機能の障害を伴うことが少なくありません。
しかし、この注意障害。一般の方には「注意とは???」と、わかりにくい内容であるため簡単に解説を行いたいと思います。
注意とは
注意とは一般的に言うと「そこに何かがある!」と気づくことを鮮明にする働きのことである。また、この気づきこそが意識とも密接な関係をもっています。それはどういうことかというと一般的に物や環境から人の感情を司る脳の一部に刺激が加わることで眠たくなる、楽しくなるなどの感情を表出させているためです。さらに、注意はこのように感情との結びつきが強い機能でもあり高次脳機能においても全ての基盤的な部分になってくるものです。そのため、脳卒中などで注意機能が低下することで記憶機能や物事を進める遂行機能(時間配分などを考え効率的にものごとを進める力)、さらには記憶や遂行機能が低下することによってコニュニケーションにおいてもなかった事を話してしまうなどの作話(つくり話様の症状)などの症状を伴う事も少なくありません。
注意機能を司る病巣
トップダウン制御とボトムアップ制御
注意機能には自ら注意を集める、高めるなどの機能(注意のトップダウン制御)と、意思と関係なく勝手に引きつける動き(自動)とそれに伴い意思が抑制することができなくなる(注意のボトムアップ制御)の2種の制御機能が存在します。
※トップダウン制御例
パソコンで文字を打ち込んでいる時に、自らキーボードに注意を向ける。また、間違いやすいスペルなどには注意する機能(意識との連携が強い)
※ボトムアップ制御例
パソコンで文字を打ち込んでいる時に、パソコン画面の傷に目がいくさらに、意思が制御できない場合については当然誤字などのミスをおかすような結果となる。
尚、脳の怪我や先天性の病気の場合はトップダウン制御を行うことができなくなることが多いとされており、気になった物に手を出してしまうことや、自ら注意を高めて作業を行うことができなくなる。
注意機能の種類
1:選択性・・・注意を向ける対象を選ぶ
2:持続性・・・注意を向け続けることができる
3:転導性・・・注意を今行っている物から他の対象に変える
4:多方向性・・絞り込んだ注意以外に注意を向ける
※例:仕事(絞り込んだ注意)をしながら時計(以外に向ける)を探す。
5:感受性・・・注意を向けて視界等で認識した物体や環境の状態から感じる度合いが変化する
6:分配性・・・一つのプロジェクトで2作業が必要であれば両動作や両内容について作業を進める
注意機能と密接の関係がある脳の部位
脳幹網様系に加えて、帯状回や前頭葉、頭頂葉が作成する神経経路が重要な脳の部分となる。
注意機能の病識
注意機能の病識についてはなかなか記憶力等も注意機能が低下する事によって低下するため、自分が何か作業をしている際に注意機能を最大限に発揮できていなくても気づきにくいのです。また、「見落としているよ」などの助言をしてもなかなか記憶として保持されにくく改善させていく事が難しいです。
注意機能の病識が芽生えた時の対応
自覚症状として家族、医療従事者は以下の自覚内容について配慮し患者をサポートする事が必要です。
・頭が冴えない、スピードが出ない、ぼんやりしてしまう、話が続かない、言葉が見つからない、疲れやすいと言ったような発言が聞かれた場合であり、注意障害に対しての気づきが芽生える段階に来ています。そのため、この時期には心的な負担等を考慮し適度な休息を行うことも必要です。過度なリハビリテショーンを行うことによってこれらの症状を再度問題ないと思い込むなどの注意機能低下の世界に入ってしまうと抜け出せなくなることも少なくありません。まずは、患者の思いに立ち行動しサポートしましょう。
注意機能各種評価
TMT 参考URL : http://rehab-idea.com/tmt/
CAT 参考URL : http://rehab-idea.com/cat/
BIT 参考URL : http://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/bit.html
参考図書
高次脳機能障害マエストロシリーズ(1)基礎知識のエッセンス 単行本
山鳥 重 (著), 早川 裕子 (著), 博野 信次 (著), 三村 將 (著), 先崎 章 (著)