脳卒中(その7)〜頭頂葉について〜

この記事では、頭頂葉の知識を少しでも知りたい人に向けて、簡単に解説します。

記事内容は、頭頂葉の範囲、頭頂葉の部位、頭頂葉の構成、頭頂葉の機能について素人でもわかるように解説します。

ざっくりとした記事なので、既に詳しい人は読むのをやめてもらっても構いません。

 

内 容

・頭頂葉の範囲

・頭頂葉の部位

 

 

頭頂葉の部位と構成

脳は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉、小脳、そして間脳に分類されます。

頭頂葉の簡略図

頭頂葉は頭上後方に位置します。

頭上前方は前頭葉、頭上後方は頭頂葉、頭部後方は後頭葉、頭部の側面を側頭部、これら4つの脳の後下方が小脳といわれる部位になります。

頭頂葉は、一次感覚野、二次感覚野、上頭頂小葉、下頭頂小葉(縁上回・角回)、体性感覚連合野が集合して構成されています。

頭頂葉を構成する各部位は、それぞれで役割が異なります。

各部位と役割について、解説をします。

頭頂葉の各部位の機能について

一次感覚野

皮膚や関節が感じる感覚を、脳内で認識する感覚優位認識装置。

触れた感覚(触覚)・腕がどの位置にあるかわかる(位置覚)・振動が伝わる感覚(振動覚)・温かい感覚(温覚)・痛みを感じる感覚(痛覚)など、あらゆる感覚を認識する部分になります。

脳内の受話器のような存在で、外界の情報を脳が受容する部位です。

ここが損傷されると、外界からの感覚を正しく認識できなくなります。

電話でいうところの、話し手が正確に会話していても、受けての受話器が壊れていると正しく認識できないまたは、伝わらないのといったような現象がおきます。

二次感覚野

脳内で動作のパフォーマンスを多角的に監視する監視室。監視室から運動を実行する操縦室へ、フィードバックを行うシステムもあるとされている。

二次感覚野は、運動にも関与し視覚情報と感覚情報そして、運動情報の統合をします。そして、運動に対してのフィードバックなどに役立てる役割があるとされています。

一次運動野と二次運動野の違い

一次感覚野は運動開始と運動中に活動する。二次感覚野は自発運動の運動開始前に活動する。

一次感覚野は、感覚の刺激を受けた時に感知する大型装置。

二次感覚野は、視覚、感覚(皮膚、関節など)、運動情報と多角的に感覚情報を監視し、必要があれば運動を実行する脳内の運動操縦室へ伝達を行います。

そのため体性感覚系では、

運動による影響を抑制するのは一次感覚野(感覚優位認識大型装置)

運動による影響を促通するのは二次感覚野(指令)

と分けることができます。

それを研究したのは、Wasakaらの報告があります。この中で、実際行なっている運動と異なる運動を視覚で確認すると一次視覚野は活動しない(視覚や運動による感覚の影響を受けない)。しかし、二次視覚野は実際行なっている運動と異なる運動を視覚で確認すると活動が亢進する(視覚や運動の影響を受ける)ことが確認されています(Wasaka:2012)。

これらのことから、一次感野は感覚を認識するのを特徴としている。しかし、二次感覚野は視覚と感覚などの感覚情報と、運動情報の統合に関わり貢献していることが整理できます。

そのため、運動を行う前には必ず、二次感覚野が先行して視覚や感覚、運動情報などを決定し動作を開始し、実際に物や空気に触れた感覚が皮膚や関節などの感覚受容器から脳に伝達されて、初めて一次感覚野が起動することになります。

・Wasaka toshiaki,Kakigi ryuusuke.Conflict caused by visual feedback modulates activation in somatosensory areas during movement execution.Neuroimage.59(2):1501-7.

・和坂 俊明.身体運動時の体性感覚情報の働き.体力科学 65巻5号463-469(2016).

上頭頂小葉

brodmannの脳地図では、5野と7野の部分を示します。

別名:PE野

 

引用文献

有國 富夫:頭頂野の入出力構造.Equilibrium Res Vol.62(4)284-301,2003.

下頭頂小葉

brodmannの脳地図では、39野と40野の部分を示します。

別名:PF野、PG野

縁上回と角回で構成されています。ここは視覚や体に感じる感覚などある動作で感じた感覚を合わせもつ機能があります。

縁上回

道具を用いた行為の使用また、その道具を使用した結果の予測をする。

角回

読み書きとの関係が強い。

体性感覚連合野

空間との関係(奥行きなど)が強い。

頭頂葉ってどうやって病気になるの?

脳血管疾患(脳卒中:脳出血、脳梗塞、急性・慢性硬膜下出血、クモ膜下出血など)、脳腫瘍、脳炎など脳を原因とした病気によって障害されます。

頭頂葉が障害されるとどんな病気になるの?

先ほども述べた通り頭頂葉は感覚の障害が顕著に現れます。

半分見えなくなったり(半側空間無視)、物がわからなくなったり(失認)、奥域や左右がわからなくなる(構成障害や左右失認)、麻痺がなくても動作がうまく遂行できない(失行)など麻痺がなくてもこういった感覚由来の特異的な症状が現れます。感覚由来のためか手足は動くため病気になっていることに気付きにくく危険な行動(はさみで自分の手を切ってしまうなど)が現れます。

 

まとめ

頭頂葉を損傷すると、感覚情報と記憶などとの結びつけが難しくなり異常な感覚(痺れていなくても痺れていると感じる)や異常な行動(はさみで自分の手を切るなど)などが現れることが考えられる。また、身体に麻痺が現れない場合もあり損傷した本人は損傷し異常なことをしていることについて気付きにくい可能性がある。

リハビリテーションではこのような症状に対して残存機能を生かした介入を進める。ここでいう残存機能とはどの感覚が生きているかまた、その感覚と記憶との結びつけは適切かなど判断し損傷してしまった本人が安全に過ごせる環境の構築や機能回復のために苦手な部分に対してリハビリテーションを行うことが大切である。

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病院に勤めていた作業療法士が、実際の臨床現場で学んだ脳出血や脳梗塞などに伴う後遺症さらに、骨折や脊髄損傷などの後遺症などの情報を提供。また、基本的な医学用語やトレーニング方法などについての知識をわかりやすく解説。

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