肩関節周囲炎について

(肩関節周囲炎)について

50代によく起こることから五十肩という名目で言われる疾患であり、正式名称は肩関節周囲炎と言われる。

好発年齢と性別

中年以降の40〜50代に多い、性別差はない(やや女性に多い)、運動習慣のない人が一般的に発症をします。

なぜ起きるの?

外傷や加齢に伴う組織変性、神経圧迫、ホルモンバランスや自律神経障害・血行障害による滑液産生不良・筋肉内循環不良(老廃物蓄積)などにより、筋肉や腱の炎症、筋肉と筋肉の間に起こる炎症、肩関節を取り巻く関節包・肩峰下滑液包の弾力性低下による関節内炎症が原因と考えられています。これは運動習慣のない人が過度な運動を行うことや、肩関節を冷やすことによってこれらの問題が出現する危険性を高めることが考えれます。

症状

痛み・痺れ:肩関節に局所の安静時(何もしていない時や寝ている時)に痛み、動作時(腕を上にあげる、腰に手を回した際など)に痛みを生じる。

拘縮(関節の硬さ):痛みに伴い腕があがらなくなる。あげなくなることによって関節が硬くなる。

しびれ:腕から手指にかけて左右差のある痺れを感じる。

診断

その他の肩・肺の病気との区別を行うため痛みや痺れなどに対しての頻度や発症時の様子、痛みの強さ・種類などの問診とMRI(肩・肺)での診断が主流です。尚、単純なレントゲンよりはMRIによる診断が確実です。

症状の経過

・痛み・痺れ

目が覚めたら突然痛かったなど、何の前触れもなくある日突然痛みが出現します。軽症例は1〜2ヶ月程度で落ち着く、重症例は3〜6ヶ月程度で落ち着きます。

・拘縮(関節の硬さ)

軽症例の痛みがとれる時期(1〜2ヶ月以降)に合わせて関節を痛みが出ない範囲で徐々に動かすことで関節の硬さは改善します。重症例も同様に痛みがとれる時期(3〜6ヶ月以降)に合わせて関節に痛みが出ない範囲で動かすことによって関節の硬さも改善します。

治療

安静(保存的療法)

痛みのない範囲での運動を行いつつ、重い物の運搬や激しい運動など痛みや痺れを増悪させるものを避けるようにする。夜間の寝返りでも痛む場合については腕の下にバスタオルを三つ折りにして敷くまたは、三角巾を使用するなど腕を安定させ関節に負荷がかからないようにする。

 

薬物療法

外服薬(貼る薬)と内服薬(飲む薬)での治療がある。

外用薬では湿布を主として示します。個人差がありますが、湿布は自律神経(血管の運動、痺れなど)に対して効果的に作用し老廃物の循環や筋肉のこわばりに対して作用します。

内服薬も外服薬と同様で自律神経(血管の運動)に対して働き血管内の循環を良くし老廃物の代謝とそれに伴う炎症を抑える血液物質の循環改善を行い筋肉のこわばりを軽快させると共に消炎鎮痛剤であれば熱感などを取り除きます。尚、薬の種類については対象者の体質や他の服薬状況などに合わせて行うことが基本となります。

 

関節注射

ステロイド注射

ステロイド注射では非常に強い抗炎症作用が働き炎症を抑える効果を発揮します。尚、副作用については経過を観察する必要があります。

ヒアルロン酸注射

これは、なぜ起きるののところで記載した内容で滑液の役割を担い関節のクッション作用として働き関節痛を抑えるものになります。

 

神経ブロック(麻酔薬)

痛みや痺れが安静や薬物療法、関節注射を行っても変化しない場合については、肩甲上切痕部分に神経ブロック注射を行います。尚、効果は一時的であり重症例では効果が消えると共に受診が必要となります。

 

温熱療法

ホットパックやカイロなどを使用し痛みが起きる周囲を温める。温めることにより血管や筋肉などを緩め循環改善を図ります。それにより老廃物の循環を促し痛み・痺れなどに対して効果を発揮し温めることにより筋肉の粘弾性改善を図ります。カイロを使用する場合については、薬局などでカイロを入れて温めるサポーターを買うことが先決です。また、低温熱傷には十分配慮する必要があります。

 

体操

痛みなどの症状軽快に伴い関節の運動を痛みが出ない範囲で行いましょう。運動を行うことによる効果は血管の循環改善と関節の硬さ改善です。代表的なものとしてはコッドマン体操があります。

 

手術

重症例による慢性的に痛みが続く場合は手術が適応されます。手術の具体的な内容は筋肉と筋肉の間を空けて筋肉の動きを改善させる。五十肩での手術例は多いものでないですが、重症例の場合は適応されます。

禁忌

糖尿病と併発して五十肩が起きた場合については、症状が長引く可能性があります。そのため、まずは血糖の管理を良好に保つことが大切です。

予防策

運動:適度に肩周囲や首周囲、上半身の運動を行い関節や筋肉の柔軟性を保つことが大切です。また、それらに伴い重量物の運搬等が肩関節のみに負担をかけることが避けられることが考えれます。

温度管理:冷房や冬の寒い時期などに過度に肩関節を冷やさないようにすることが大切です。これらは筋肉の柔軟性を損ない、血液の循環不全をきたし老廃物がたまりやすくなり加えて、筋肉の柔軟性を損なった結果筋肉に傷をつけ炎症を起こすことが考えられます。

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病院に勤めていた作業療法士が、実際の臨床現場で学んだ脳出血や脳梗塞などに伴う後遺症さらに、骨折や脊髄損傷などの後遺症などの情報を提供。また、基本的な医学用語やトレーニング方法などについての知識をわかりやすく解説。

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